あべこべ君【僕のヒーローアカデミア】【男主】 (ページ37)

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「僕の考えは一貫して変わらない」ページ37

遠くで警報が鳴っている。

「……それ(・・)、どっかから盗んだのかな？」

モヤの手(？)に掴まれている紙を指差す。しかし、お兄さんは僕の質問には答えず、静かな声で言った。

「まさか雄英の生徒とはな」

「不本意っちゃ不本意さ。僕の利益のため、ヒーローには興味無い」

「なら俺と来い」

「もう忘れたのかい？僕の利益になる話なら聞くと言ったんだが？大体、僕の事をよく知りもしないくせに戦力になるとどうして言い切れるのかなぁ〜」

「"あべこべ君"……5年ほど前から各地を転々としながら、その名を馳せているエンタテイナーの一種、とでも言えばいいでしょうか。殺人などはせずとも、行方不明者は出している。窃盗などを繰り返し、個性でヒーローヴィラン構わずおちょくる姿勢から、世間では"ひょっとこ"とも呼ばれ始め、それに呼応するようにお面を被り始めたとか」

バーテンダーの格好に相応しい渋い声が、淡々と僕の情報を並べる。それを、まるで自分の功績のように、お兄さんが鼻を鳴らした。

「優秀なお仲間が居るようで何より。僕は必要無いと判断した」

「待て。なんでそうなる」

「僕の考えは一貫して変わらない。君は、僕に仲間になってほしい割に、僕に何のメリットも提示していない。それが僕がOKと言わない理由だ」

そろそろショータ達がやってくるだろう。この人達もここに長居は出来ないはずだ。

「死柄木弔、行きましょう。目的は達しています」

「……あぁ」

黒いモヤが広がって、お兄さんはその中に入って行った。

「自由をお望みでしたら、いつでもお待ちしてますよ」

「……」

意味深な言葉を残してモヤは消えた。手元に舞った一枚の紙切れを拾い上げると、微かに酒の匂いがした。