「君らも、恐れ知らずの大馬鹿者かい？」 ページ36
「委員長決め？」
「ええ……本当に聞いてなかったんですね」
「そりゃあ寝てたからね」
クラスの委員長を決めるらしいと、前の席のポニテちゃんに聞いた。どうやら投票式らしいが……
「ポニテちゃんはやりたいのかい？」
「(ポニテ……？)それは……やりたいですが」
「てかまだ顔見知りになって数日だってのに酷だなぁ〜」
「皆さんやりたいようなので、票は割れるんでしょうが…」
リーダー役って面倒臭そうだけど、こういう場所に集まる人間は好きなのかな？積極的でご立派なもんだ。
「じゃあ僕は君に入れるよ。全員が自分に票を入れるなら、恐らくあの七三くんとの戦いになるだろうね。彼なら他の人から票が集まってもおかしくない」
「あの……嬉しいのですが、逆さんは」
「ないね」
「…そうですか」
「君の名前は？」
「八百万百といいます」
「ヤオヨロズモモ……ね。OK、じゃあ投票してくるよ」
投票が終わると、結果を聞く前に僕は窓の外に意識を向けた。
……妙〜に肌触りが悪い空気だ。こういう時は必ずと言っていいほど良からぬ事が起こる。予期していたとしても、そんなの知るかと言わんばかりに。
「はぁ……」
そのうちチャイムが鳴って午前の終わりを告げる。立ち上がって教室を出た。
投票の結果はどうだってよかった。僕が投票したポニテちゃんが勝とうが、七三くんが勝とうが、第三者が当選しようが、僕にはどうだっていい。
賑やかな食堂には行かず、長い廊下を行き先を特に定めずに歩く。今日は外で昼寝でもしようかと、適当な窓から飛び降りる。
「朝からご苦労なこったね〜記者もバカばっかりで疲れるだろうに……」
正門辺りの人集りを遠目に眺める。オールマイトとかいうヒーローがここの教師になった事が相当ネタになったらしく、僕も今朝迷惑被った訳だ。
角を曲がって、開けた所で一本の木に背中を預けた。腰を下ろして目を閉じる。喧騒を意識から追い出すと、風の音が耳に入ってきて心地よい。
「くだらねー平和だなぁ……」
その時、フッと僕の前に影が立った。
「全くだ」
「……誰だい？」
目は閉じたまま問う。返事は返ってこない。仕方ないなぁ、とゆっくり目を開けて見上げる。そこには、何となく覚えている顔が一つ。と、人間かどうかも見分けがつかないモヤが一つ。
「君らも、恐れ知らずの大馬鹿者かい？」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
