あべこべ君【僕のヒーローアカデミア】【男主】 (ページ35)

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「俺もお前を見放すつもりはない」ページ35

「俺もお前を見放すつもりはない」

動画を止めて横を見る。虚を突かれたような表情で俺を見ているユキと目が合った。

「やんちゃをすれば、手に負えないと俺が見限るとでも思ったか。生憎だが、俺は自分のした事には最後まで責任持つぞ。お前の思い通りにはならない」

「……そーゆーことを言ってんじゃない」

「俺に哀れまれるような事でもしたのか？

確かにお前の考え方は世間一般的とは言い難い。他者の死に興味がないのも知ってる。それに抗ってないのもな」

色んな事を無視して根本的なところだけ見れば、こいつはただの子供。肉体的にも精神的にも、まだ未発達な部分が多い子供だ。

幼少期の子供ってのは、良く言えば素直で、悪く言えば受動的で判断が曖昧な生き物だ。周りの環境が人格形成に大きく影響する。どんなに悪党でも泣いて改心する事があるのは、心の内奥に深く刻み込まれているから。

逆に、厄介なのはこういう奴だ。簡単に個性を消せるし体格差もあるのに、ふとした瞬間諦めを覚えてしまう。こいつは駄目だ、根っこが俺達とは違う、と。

環境が悪かったんだなと同情する事も出来た。だがそれをしなかったのは、こいつの中の幼児的反抗心が強い事を感じていたからだ。まともな教育も、親からの愛故の叱責も受けてこなかっただろうから、1人で生きていく事に固執して、他人からの言葉を必要以上に跳ね除けようとする。

「だが俺は、見込みのない奴を置いてくほど親切な人間じゃない」

「……」

「ゼロからのスタートでも着いていけると思ったから雄英を勧めた。

お前の言った事も正しい。刷り込むとか捕まえておくとかって表現は嫌いだけどな、お前がそう思うのも無理はない。だが、看過出来ない事をお前がやってきたのも事実だ。どこかでツケは払わなきゃならん。最低限社会に馴染む努力はしろ。今までのお前だけでこの世界は生きていけない。

もし可哀想だと思われたくないなら、胸張って言い返せるだけの力はつけるのが正しい仕返しってもんだ」

「……知りもしないくせに、勝手にベラベラと喋ってさぁ」

そこまで言って言葉を切り、暫く沈黙した後、「もう寝る」と吐き捨ててリビングを出て行った。俺はパソコンに向き直って続きを再生する。

……あいつの本音が見れただけ良しとするか。