あべこべ君【僕のヒーローアカデミア】【男主】 (ページ34)

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「"あべこべ君"は僕のものだ」ページ34

あのまま空気を奪っていれば……呼吸も出来ず、減圧によって体が膨張していただろう。たった十数秒で、彼の命を簡単に奪う事が出来ていた。

「それが間違ってるって言いたいんだろう？君も、あのヒーローも、みんなも」

でも僕には、それの何が間違っているのかがサッパリだ。

勝つために邪魔を排除する事の何がいけないのか…威圧を感じたあの表情を見ても、その答えは出てこなかった。

いつもそうだ。僕がやる事なす事、全部みんなから外れているらしいんだ。悪い事をしてるつもりのない僕の振る舞いを見て、誰かが言った。

〈あんな事しか出来ないなんて、可哀想にねぇ…〉と。

「僕はイカれてんだって、どうしようもない奴なんだって。怒って呆れた先にあるのはいつだって僕に対する哀れみ。うんざりなんだよああいう目は。僕は可哀想な子なんかじゃない、哀れむくらいなら怒ってよ。怒鳴って、罵ればいいじゃないか。ほら、ショータも言えばいい。異常者は理解出来ないって。

僕は自分を惨めだとか、最低で救いようのないクズだとかって思った事はただの一度もない。でもこのまま君らと居たら自分を疑いそうだ。ねぇショータ、僕を洗脳でもしたいのかい？僕が子供だから、刷り込んで更生させたい？これ以上ヴィランを生まないために、今のうちに僕を捕まえておくのが君の狙いなんだろ？

残念ながら僕は君に説き伏せられるほど純粋じゃあない。人が死ぬ事を何とも思わない人間だ。この際だからはっきり言わせてもらうよ、僕はもう手遅れだ。今更他人に従うわけない。僕は僕を捨てない、誰に強いられたって"あべこべ君"は僕のものだ」

ここで泣き喚く事が出来たら、僕が普通である事の証明になる。

自分が普通でない事を不憫だと思った事はない。マトモな環境を羨んだ事もない。普通になりたいと願ったりはしない。
否定しないでと言ってるんじゃない。僕の自由を哀れむなと言ってるんだ。

人が死のうが猫が死のうが知ったこっちゃない。命なんてそんなものだ、呆気なく消える。それを、あたかも慈しみ守るもののように丁重に扱うのが僕には理解できない。勝手にやってればいいものを、彼らはそれに参加しようとしない僕を可哀想だと言う。

こんな不合理はいつか、今の僕を塗り替えてしまう。