「ムカついたんだ」 ページ33
「ここは＿＿＿＿」
突如として始まった鑑賞会。今日の訓練を録画したものを、パソコンで観ている。ショータは独り言なのか僕に教えているのかよく分からない声量でブツブツと喋っていた。
3試合を観終わって、僕の試合。
「……」
ただ無言で画面を見つめるショータに目を向けた。それに気づいたのか、「お前も見てろ」とショータは言った。仕方なく画面内の動きを追う。
「何故尾白と葉隠とは別行動をとった」
オジロ…ハガクレ……一緒のチームだった2人かな？
「埒が明かなかった。あのまま何の案も出ないまま一緒に居たら負けてた。そもそも僕は誰かと行動するのに向いてない」
「他人の特性を見抜いて利用するのは得意だろ」
気持ち悪い、なんだこの真っ直ぐな称賛は。簡単に嫌味へと姿を変える言葉を、何の躊躇いも無く……
「いくらでも利用出来たさ。相手がただのバカでなかったらね。それなりに自我が強いからあの場に立っていた、だから闇雲に懐柔はしなかった。時間もなかったし」
ショータが僕の答えにどう思ったかは知らない。納得したのかもしれないし呆れたのかもしれない。或いは、あの2人のように困ってしまったのかも。
でもショータは何も言わない。また真っ直ぐパソコンの画面を見るだけだった。
……こんなの見て何になるんだ。反省・復習とよく言うが、世間はそんな素直な人間で溢れてるとでも言うのか。そんなはずがない。そんな事は…絶対にない。
次にショータが口を開いたのは、僕と核の位置が入れ替わってからだった。
「轟を煽る必要はあったのか」
「ムカついたんだ。僕じゃない何かを見てる目が気に入らなかった。だから、彼が嫌がる事をした」
右と左で個性をあべこべにするのが彼にとって嫌な事だってのは、やってからそうなんだと気づいた。なら利用しない手はない、そう思ったのも事実だ。
「……障子に何をしようとした」
「彼の周りを真空状態にしようとした。先生に止められちゃったけどね」
「それはつまり、
殺そうとした＿＿＿＿…そういう意味でいいか」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
