あべこべ君【僕のヒーローアカデミア】【男主】 (ページ26)

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「それでこそ君だねぇ」ページ26

まぁいくらショータに言われた(念じられた)としても、僕はおあつらえ向きの個性持ちでもないのでスーパーミラクルな成績は出せない。マフラー付きの足で走れる訳でもなければ、大砲でボールを飛ばす事もなく、また太い腕から生み出される筋力で握力計を破壊する事もないのだ。

でも昔から走り回ってたおかげで体力はそこそこあったみたいで、持久走では、個性で走り去った人を除けば僕がトップだった。

とまぁそんなこんなで結果発表のお時間だ。ショータは合理的に一括表示すると言う。

僕が最下位になる事はないだろうと思って上から見ていくと、案の定僕の名前は真ん中らへんに表示されていた。1位とか2位には興味は無いが、除籍と言われた最下位は気になったので見てみる。

【21位緑谷出久】

人の名前なんて覚えないが、緑谷出久がどれかは周りを見ればすぐに分かった。顔面蒼白で震えている彼は、思い返してみるとボール投げの時に一悶着あった人だ。数十メートルから急に数百を飛ばしたのは記憶に新しい。紫色に腫れ上がった指を庇ってか、その後の測定はグダグダだったように思うけどね。

これで入学早々クラスメイトが一人減った。暴挙だ何だと騒ぐ人も居る。けど、彼に向く大体の視線が意味するのは同じものだ。それが同情さ。

……待てよ？目的があくまでヒーローを育てる事であるショータが、こんなに呆気なく卵を切り捨てるだろうか。確かに甘っちょろい考えの奴は要らないと常々言ってる(顔に出てる)が、少なくともヒーローとしての心意気は僕よりはあるはずだ。
いくら監視対象の僕を除籍しづらいとは言え、この手段は中々ショータらしくない気がしてならないなぁ〜

「ちなみに除籍はウソだ」

「……ククッ……それでこそ君だねぇ……」

周りには聞こえないように声を押し殺して笑う。そんな事しなくても、驚愕の声がグラウンド中に響き渡るから大丈夫なんだろうけどさ。

「君達の本気を引き出すための合理的虚偽」

したり顔というか何というか……何にせよ三十路のオッサンがやる顔では無いねぇ。
それも含めて笑いを堪えていると、ショータと目が合った。今度は一瞬じゃなく、数秒間。見透かすような視線と、吹き出しそうな目が言葉を交わす。

──ちゃんと本気だったんだろうな。

──失礼だなぁ、言われた通りにしただけだぜ？

存外顔に出やすい人間なのだと、僕は改めて認識した。