「俺の勘だ」 ページ17
ユキが別の部屋に行ってからしばらく経った頃。そろそろ酒もつまみも尽きてきた。
が、それ以外に気になる事が一つ。いつもは考えなくても回るらしいマイクの口が、だんだんと歯切れ悪くなってきた。
「なんだ。言いたい事があるなら言え」
痺れを切らして問う。大袈裟に肩を跳ねさせたそいつは、缶に残ったビールを飲み干して溜息をついた。
「お前……警戒とかしねぇの？」
「……」
「確かにヴィランって括りに入んのかは曖昧なとこあるけど……なんで施設に預けたり」
「俺の勘だ」
「勘〜？ロジック野郎のお前にしちゃ合理的じゃねぇな」
あいつは、孤児院などの施設に対して何らかの抵抗を持っている。
一度逃げられたんだから、大人しく戻るフリをしてもう一度逃げ出す事だって可能なはずだ。あいつの頭ならこれくらいは思いつくだろう。でもわざわざ自由度の低いこの場所に来てまで、それを拒んだ。
子供にまともな教育すら受けさせない、きっとろくでもない場所。
まだガキだってのに……道理から外れた事すら正しいと言ってしまう。
「あいつは望んで歪んだ訳じゃない」
葛藤など微塵も伺えない目だったから、狂気を正気だと思っている。刷り込まれたのだろうか、自らの意志関係なく……
「ふーん……だから救けてやろうってか？ご立派だけどな、さっき初めて話した俺でも分かる事が1つあるぜ。
ああいう奴は救いを求めたがらねぇ。どんだけ努力したところで、必要ないって一蹴されるのがオチだ」
「……確かに、合理的じゃねぇ」
もし俺の推測が当たってるなら、あまりに不憫だ。真っ当な人生を歩む権利はあったはずなのに、環境のせいで奪われたとしたら……
「んま、別に否定はしねーぜ？ただ、あいつも色んな奴に目付けられてた"半ヴィラン"って事は忘れんなよ」
……少し、調べてみるか
「僕が信じられるのは君だけだよ」→←「ヒーローには向かないよ」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
