「ヒーローには向かないよ」 ページ16
金髪の名前は山田ひざしと言うらしい。ヒーロー名の方が呼びやすいからマイクと呼ぶ事にした。マイクもショータと同じ雄英の先生をやっていて、教科は英語だと言った。
ならば、利用しない手は無い。
「んでこの文法がよ〜」
「そういやこのジーさん川に落ちて死んだって話だぜ！」
「アクセントなんか感覚で覚えちまえって」
「要は流れ！FLOW！Say together, FLOW！！」
まぁ〜随分と喧しい人間ではあった。酒が入ってるのかと思ったが、隣で缶ビール片手に僕らを眺めるショータの反応からすると、これが通常運転らしい。ボイスヒーローとか言ってたっけ……よくこんなテンションで生きてられるなぁ。
だがしかし、流石と言うべきか、口から出てくる言葉は小難しい日本語なんかじゃなく、噛み砕かれた言葉だったりフランクな英語だったり。否が応でも耳に入ってくるおかげで、本を読むだけじゃ理解が追いつかなかった言語が少し輪郭を明瞭にした。
「いやー怖ぇな！一回で全部分かるってバケモンかよってな！」
「一回聞いても分からないようじゃ能無しさ。普通だったら本を読んだその場で理解しなきゃならない」
「CRAZY BOY！どこが普通よそれ！」
「僕の普通だよ、君らには分からない」
僕の普通が世間では普通じゃない事くらい知ってるさ。受け入れられないから僕も受け入れない。そういう相互関係で僕と世界は繋がってる。良いじゃないかシンプルで、割と好きだよ僕は。
「…学校ってさ、どんな人間が来るの？」
「そりゃもう色々よ！賢い奴も居りゃあバカも居る、強ぇ奴も弱ぇ奴も。でもあれだな！ヒーロー科の奴らに共通すんのは、思いやりがあってお人好しで、余計なお世話焼くって所だな！」
「ふ〜ん……まぁヒーローになるんだからそれもそうか」
「オメーはどうだ？人を助けたいって気持ちは？」
「ん〜、僕は君らと違って人生の明確な目的が大分子供っぽいからねぇ……。それが僕にとって享楽的であるなら、やる価値は無きにしも非ずって感じ〜？まぁ根本的に、他人に自分の人生を割くって考えは僕には無いから、ヒーローには向かないよ」
「楽しいか楽しくねーかで決めてるって事か？」
「端的に言えばそういう事」
わっかんねー！と叫んで、ショータの捕縛布に絡められながらビールを呷ったマイク。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
