「……あらら」 ページ28
「よろしくね〜」
前半でドンパチ派手にやってくれたおかげで、全員に火がついてしまった。入試の実技試験を思い出す限り、この中で僕が余裕ぶっこくのは、つまり死を意味する。色んな意味で。除籍も吝かではないが、どうせなら面白い方向に舵を切りたいものだ。
さて、この2人はどんな風に動くだろう？
「どうする？相手は推薦入学者だぞ」
「弱気になっちゃダメだよ！」
大きな尻尾を持つ男の子と、見えないが恐らく裸であろう女の子。
僕らはヴィランチームな訳で、この部屋に陣取るバカでかい核(ハリボテ)を、外から入ってくるヒーローチームから守らなきゃならない。
尻尾くん曰く、相手チームに居るのは現NO.2ヒーローの息子だそうで、一般ではなく推薦で入ってきた奴らしい。一概に超人とは言えないが、何かが秀でているのは事実だろう。
「逆くん、だったよね？何か案ある？」
「さぁ……相手の個性が分からない事には対策のしようがないと思うよ？オメデタくんもタコくんも余裕がありそうな感じだったし、僕的に先攻は向こうに譲ってもいいかな〜って。迂闊に手を出して逆手に取られるよりだったら、その逆を僕なら狙うね」
2人は僕の答えに納得がいかない様子だったが、そんな事待ってくれるはずもなく試合は始まった。
「じゃあ僕は待ち伏せでもしてるよ。2人はご自由に」
そう言い残して部屋を出た。一つ下の階に降りて窓の外に身を乗り出す。地面を見下ろすと、丁度2人が入口の屋根の下に姿を消したところだった。
数秒後、一気に建物内の温度が低下した。
「……あらら」
足元を凍らされちゃった。はてどうしたものか。
直立のまま天井を見上げていると、下から足音がして、タコくんと、半身氷のコスチュームに身を包んだオメデタくんが僕の姿に気づいた。
「やあ」
にこやかに挨拶すると、タコくんは気まずそうに、オメデタくんは興味なさげに視線を逸らした。まったく失礼だなぁ……
そのまま上に行った2人。
「……」
その態度が何となく気に食わなくて、あるタイミングを見計らって指を鳴らした。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2022年8月17日 12時
