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●亡者 織田作之助
その日は、随分雨が降っていた。
傘をささなかったのだろうか。くせっ毛の先端からぽたりぽたりと垂れる雫。綺麗に巻かれていたのに、だらしなく首に垂れ下がる包帯。
初めてあった時のように、死んだ魚の目。
『太宰。風邪、引くわ』
「……………………」
『お風呂で温まって、美味しい料理を食べましょう。』
「………………………」
『……どんなに悲しんだって、亡くなった人は戻ってくれない。でもね、何か、大切なこと、教えてもらったんでしょう?』
「………………うん」
『うふふ。私もね、この前命を大切にしろって、怒られたの。死なずとも、怪我をすれば、悲しむやつは必ずいるんですって。…………貴方も、私も。』
今日は、なんだか思い切り叫びたいくらいだ。珍しく、私の方から腕を渡してみる。
やせ細った体は、今にも消えてなくなりそうだ。しっかりと、近くで見てきた者が、捕まえておかなくては。
「………人を救う側になれと、言われた」
『そう、』
「正義も悪も同じなら、せめて救う側に言った方が素敵だろうと」
『彼なら言いそうね』
「…………私は今日、ここを出るよ。君も……………………………一緒に来てほしい」
「私は君が、すき。大好き。織田作の他にも、君から色んなことを教えて貰った。でも、私は君の話、何にも知らない。だから、教えて?光の下で、ちゃんと生きるから」
「私に、生きる意味を、下さい。」
『…………………………………ごめん、なさい。』
ぽたり。床に落ちた一滴は、雨の雫か、涙か。
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A(プロフ) - 、さん» ご指摘ありがとうございました! (2018年3月15日 8時) (レス) id: ac1a14e4fb (このIDを非表示/違反報告)
、 - 実在する人物、団体、アニメキャラ等を扱う二次創作になりますのでオリジナルフラグ外して下さい (2018年3月15日 8時) (レス) id: 7e94334cd1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:A | 作成日時:2018年3月15日 8時