検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:1,398 hit

第6話 俺の名前 ページ7

あぁ、成程。それなら全て合う。父上様っつー変なのも言わせられてたんだろうな……
「そうか……気の毒に」
「君は、笑わないの?」
「笑うわけねえだろ。当たり前だ」
ということは、こいつ世間というものを全く知らないんだな?そういうことか。だから、俺にもあまり驚かなかったのか。
そこで、綾斗は言った。
「君の名前、教えて?」
ぅ。出た。えー……どうしよー。
ぜんっぜん覚えてねえ。わかんねえ。しばらくそんなんで考えあぐねている俺を見て、綾斗は言った。
「君、キオクソウシツとか?」
「そう、それ!」
カタカナみたいに喋ったのは置いとくとして、俺は俺の経緯を話そうとした。
「だいじょーぶ?」
看護師だ。
「ちょっと脈とるねー」
ふざけた声。俺は下がって、道を譲った。
そういえば、この時代貧しい子供には入院費などを出さないようにしている。つまり、俺らは無料で退院してオッケーということだ。閲覧者のみんな、わかってくれた?

俺らは一週間ほど、病院で暮らした。俺が居座っている件については、同じ孤児として扱ってくれそうなので良かった。飯はちゃんと喉を通った。でも、いまいち体に合わない気がする。綾斗は白米をすごく物珍しそうに食っていた。こいつ、本当にやばい状態だったんだな。
俺は、俺の経緯を詳しく綾斗に話した。突然目覚めて、記憶がなくて。機械じゃないかなーって思ったりして。そうして、お前と出会った。
綾斗も、素直に話してくれた。生まれたときから、キモイ親父に育てられて、父上様って呼べって言われて、着替えは一年に二回、いかなる寒いときも必ず半袖半ズボンだった。外には絶対に出たらダメって言われてて、ニュースもまともに聴けなかったから世界の常識を知らない。普通の少年になりたいと願ってきていた。
「そうだったのか……」
綾斗は初日から顔色もずいぶん良くなって、笑顔も多くなった。もちろん、普通の人の髪は黒いことも教えた。
退院前日、綾斗は言ってきた。
「君の名前、提案してもいい?」
「えっ、マジで?」
俺は喜んで受けた。
「Aってどうかな……?」
「A?」
すごい。凄く、しっくりくる。
「あんた、名付けの天才かよ!すげぇ好み」
思ったままを言ったら、すごく喜んでくれた。
A……凄くいい名前。気に入った。

俺は、これからとりあえずAと名乗ることにした。

俺の、仮名が、決まった。

第7話 旅の仲間→←第5話 綾斗



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
設定タグ:己の旅路 , オリジナル , 小説   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

はなフリ - 瑠梛さん» マジですか?知りませんでした!今度の編集で変えておきます!感謝します!ありがとうございます! (2018年8月22日 20時) (レス) id: bf0f5d46e4 (このIDを非表示/違反報告)
瑠梛 - すごいなんか……ストーリーも面白いですし、情景がありありと浮かぶのも凄いです。上から目線で申し訳ないですが、小説の決まりのようなもので、「…」は偶数個書く、という決まりがあります。それを加えたら、もっと素晴らしくなると思います。応援してます! (2018年8月22日 19時) (レス) id: 06f848d20e (このIDを非表示/違反報告)
あこりん - 検定楽しみにしてたら小説が来た…なんと!下の人と同様、楽しみです! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 566e778bad (このIDを非表示/違反報告)
篦魏饠 - 待ってなんかめっちゃ続き気になるんやけど…応援してます! (2018年8月22日 16時) (レス) id: e10556a88c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:はなフリ | 作成日時:2018年8月22日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。