劇場哀歌 一番一行目 ページ1
真っ白な雪が降り積もる日。
黄色い肌に真っ暗髪と目、薄い布に身を包んだ少女が只一人日本語で歌を響かせていた。
通る人々は、通り過ぎて行く者、遠目で見る者等様々で、だが、皆首を右に傾け過ぎ去って行く。
少女はそれを横目に見ると歌っていた口を閉じ歩き出した。
こんな真冬に裸足の少女が1人、生きて行けるのだろうか。
少女はどんどん道の裏の奥に進んで行った。
そして、たった一角にある布のほつれた布に横になった。
冷えた足を手で包む様に丸くなり、少女は静かに、何も写ってはいないであろう目を閉じた
少女の名はA
日本で生まれ、そしておよそ4歳で人誘いに捕まり、此処、英国に売られたのだった。
Aは生まれつき片方の目の視力が低くかった。
だが、もう片方の目は何キロ離れようと見えていたのだ。何より、Aのもう片方の瞳は紅く色付き「鬼の子」と忌み嫌われていた
「寒い…」
小さくボソリと呟いたAの声は高く降り積もる雪に吸い込まれ誰の耳にも届かず消えた。
はずだった_______
「_________?」
耳に突然入って来た言葉に、Aは驚き飛び起きた。
逃げ出そう。そう思ったAだったがAは目の前にいた人物に目を奪われた。
金色に光る所々跳ねた髪を赤い紐で一つにまとめ、宝石の様な緑色の目はAの事をジッと見つめていた。
Aは見つめられるのが余りにも長いため徐々に顔を林檎の様に赤く染めて行った
「あ、あの。何か…?」
Aは耐えきれず思わず言ってしまった言葉を手で塞いだ。グッと下唇を噛み、俯いた。
すると、
「…コイ。」
男の口から完璧とは言い難いが、日本語が飛び出した。口を押さえていた片方の手を引かれ歩き出した。
男はズンズンと無言で進む為、Aも遅れまいと早足で歩いた。
男はギィ…と重たいドアを開けるとAを押す様に中に入れた。
中には勿論美男美女が揃っていた。来ているものも男を含め高級そうな服だった。
男は着ていた上着をAに投げる様に渡すと、去って言った。
Aは状況が掴めずキョロキョロと辺りを見渡すとその場で身を小さくした。
辺りには色んな人の足があった。
意味の解らない言葉の会話にAは怖くなり目を閉じた。
すると、耳にパチン、と何かが付けられた。
周りの会話が一気に理解できる言葉へと変化した。Aは理解出来ず目をまん丸にして驚いていると、後ろから声が聞こえた
「ちゃんと、聞こえますか?」
振り向けばさっきの男とは違う、可愛らしい男が立っていた
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作者名:華丸 | 作成日時:2016年10月24日 20時