1話 ページ1
七海さんのことが好きだ。
初めて会った時はお互い呪術師としてではなく、一般人として、普通の人として私たちは知り合った。任務の帰りに、私がハンカチを落として彼がそれを拾ってくれたのだ。
話すうちに彼は元サラリーマンで、1度呪術師を退職してまた戻ってきたのだそうだ。五条先生の後輩で1級呪術師。私のクラスメイトにも特級呪術師や準1級呪術師はいるのでなんだか私の周りは強い人が多いなぁと思ったりもした。
彼が私のどうしようもないわがままである連絡先の交換を受け入れてくれたのも、私が呪術高専生であることを制服から理解したみたいだ。
誰だって年上の大人に憧れる時はある。
私は今が丁度その時期で、少女から女性になるこの絶妙な時期に憧れを超えた感情が芽生えるのはしょうがないと思う。
それからメッセージのやり取りを何回もした。補助監督さんに頼んでこっそり七海さんのことについて聞いたりもした。恋を自覚したのはその頃だったと思う。
綺麗な金髪が好き。
切れ長の彫りの深い顔立ちが好き。
スラッとした足が好き。
彼の無理に目を合わせないけど心配している時はそっと顔を覗く優しさが好き。
私のしょうもない誘いを断る時もしっかりメールの返信をくれる誠実さが好き。
私の話を最後まで聞いてくれるところが好き。
彼のために、身だしなみに気を使うようになった。毎日のメイクは正直いってめんどくさいし、時間もないけど彼のためなら頑張れる。髪の毛もやっと自力でコテ使えるようになったし、痩せたからピチピチのスカートも入るようになったんだよ。
他にも歩き方や仕草に気を使うようになった。同級生の真希ちゃんからは「可愛くなったな」って言われた。恋をすると女の子はうんと頑張れるんだよ。
無理やりお願いを聞いてもらって一緒の任務に同行したこともある。「馬鹿なんですかあなたは」って言われたけど帰りにカスクートを買ってくれたのも覚えている。
私は傲慢で臆病者だ。
こんな贅沢あってはいけないのに、私のことを好きになってほしいというどうしようもない思いは溢れるばかり。
恋をするのは大変なことだなぁ。
任務の帰り道、高専までの坂道を私は1人で歩き続けた。
朱色の空が綺麗だった。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2023年1月1日 18時