No.106 ページ6
「……殺して、
姉さんがどれほど馬鹿なのかしらしめてやりたかった」
そこで目黒くんは悲しげに顔を歪ませた。
「……誰よりも、
姉さんはあいつを信じてた。
それなのに姉さんを裏切ったあの男を、、
許せなかったんだよ」
ふっとそこで目黒くんは笑った。
「……でも、
本当に許せないのは俺自身なんだよ。
――今でもたまに思うんだ。
過ぎてしまった過去を変えることができないかって。
現実から目を背けた俺が、
ずっと逸らさずに前を見据えていた姉さんを責める資格なんて、
――本当は一つもないんだ」
私はそう言った目黒くんを見て、強く思う。
……ねえ目黒くん、何があったの？
あなたにそこまでのトラウマを植え付けたものは、
……一体なに？
「そのときは頭に血が上ったけど
……まあ常識的に殺せないよね。
痛めつけてやろうとか思う程度だったよ。
それで、
その場でその男に問いただしたんだ。
そいつは言ったよ。
……迷惑なんだって。
姉さんの愛情が重い。
……そう言って
知らない女を隣に寄らせたまま俺を見下すように笑ったよ。
――可哀想に。
あんな姉を持つなんて、同情するよ。
そんな馬鹿みたいなことを言い捨てた。
……意味が分からないでしょ？」
「……目黒くんは、
今はもうその意味を理解してるの？」
私の言葉に、
目黒くんは頷く。
「……苛立った俺はそのまま姉さんの家に行ったんだ。
あの男が他の女といたことを伝えたら――
姉さんはもうだめだねって呟いて話を聞かせてくれた。
……そこで、
ようやく理解したんだ」
理解できない私に、
目黒くんは衝撃的なことを告げた。
「俺が、姉さんを
そんなふうにしたんだって」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
