No.102 ページ2
「……分かろうとして分かったわけじゃない。
ただ、いつもそうだったことと
その男が違う行動をしていたから気付いたんだ」
「……いつも？」
目黒くんは頷く。
「好意を向けている相手はその好意が態度に出ることを完全に押し隠すことはできない。
――少なくとも俺はそう思う。
でも、その男からは一度だって姉さんへの好意を感じられなかった」
話を聞いている私の視線から逃れるように目黒くんは空を仰ぐ。
「……知らない方がいいこともあるんだって痛感するよ。
でも当時俺は本当のことが全てなんて、
下らない正義感を振りかざして
……姉さんの苦悩に何も気付かなかったんだ」
大嫌いだよ、と
目黒くんは吐き捨てる。
「当時の愚かな自分を
殺してやりたいくらい憎んでる。
……それを知った俺はすぐに
その話を姉さんにしたんだから」
「お姉さんは何て……？」
「そうなんだ、って一言告げただけだったよ。
……今なら、それは事実を分かった上での言葉だって分かるのに、
……俺は、
姉さんが認めたくないがために誤魔化したように感じたんだ。
あからさまな敵視はしなかったけど、
……俺は家族に対して偽りの愛を言ったあの男が許せなかった。
――どうしても」
私はその言葉に
妹を思い出す。
――「お姉ちゃん、私は許せないよ。
……お姉ちゃんのその事実に気付かなかった私自身もそうだし、
いじめた人も、
――大嫌い」
妹もまた、
今の目黒くんのような目をしていた。
……妹が悪いわけではないのに。
言わなかった私が悪いのだから。
言えなかった私が、この結果を招いたのだ。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
