No.148 ページ48
〜目黒side〜
「ちょっとだけ待って。
着替えたらすぐ行くから」
そんな声がインターホンから聞こえて、
まずは胸を撫で下ろした。
……こんなことになったのには事情がある。
今から数時間前のことだ――。
「……お帰り、姉さん」
「――久しぶり蓮」
この数年間、一度も帰ってこなかったことの理由を聞きたいとも思ったけど、
きっと何かしらの考えあってのことだろうと
納得させることにした。
――それより今はもっと聞かなきゃいけないことがある。
ちょうど姉さんの後ろからぬっと顔を出した男は、
にっと笑った。
「よう目黒」
「ああ、よう……って
渡辺、お前何で来てんだよ！」
危うく胸ぐらを掴むところだった俺を姉さんが制す。
「渡辺くんとも会うのは久しぶりでしょ？
私が呼んだの」
「呼んだって……」
「ずっとメールだけだったし会いたいなーって」
……遊園地行った後にこのこと聞いてなかったら
誤解を招きそうな発言だな。
「……だからって、
何でお前が今日家に来ることになるんだよ」
「仕方ないでしょ。
蓮だけだったら、
彼女に会わせてくれないに決まってるんだから」
聞き捨てならない発言に姉さんを見る。
「……………会う気？」
「もちろん。
愚弟がご迷惑かけてます――って」
はーっと溜め息をつく。
あいも変わらずの能天気だ。
数年経って少しは変わったかと思えば、
やっぱり全く成長はしていないらしい。
「………分かった。
会いたいんなら会えばいいよ。
けどまずは俺の質問に答えて」
「なあに？」
「姉さんがいた二年前のこと。
……俺には全然分からなかったんだよ。
当時何が起きたのか。
……姉さんは詳しいことを一切語らずに県外の会社に就職していったから、
ずっと聞けずじまいだった。
……姉さんがあの男と別れる原因になったのは
――俺の、せいだった？」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
