それでも好きになった。② (ページ30)

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No.80 ページ30

「一緒に帰りたくて」

俯き、恥ずかしそうに言う川波さんは、

先程から騒いでいた輪の中心にいたらしい。

「ごめん、待たせたでしょ？」

「ううん。

部活終わったの、さっきだから」

いいなあ、と言う声が聞こえた。

「……川波さん。

一応、言っておくけど――」

「なに、れ……蓮くん」

俺は口をつぐんだ。

「……名前、

蓮で合ってるよね」

怪訝な顔をしていたらしい。

川波さんが不安そうにしている。

「何でいきなり名前呼び？」

「……思ってみたら、

私、部活が忙しくて付き合うとか、

経験したことがなくて……

付き合ったら名前呼びになるって聞いたことがあったから

……か、形だけでもね！」

「……そういうものなんだ」

ふうん、と微妙な反応の俺に川波さんは不満げだった。

「……あ。

実験室寄っていい？」

「実験室？

なんか忘れ物？」

「……そういうわけじゃないけど」

俺は言い淀む。

川波さんの前で木ノ下さんのことを話していいものか悩んだ。

「――ああ、木ノ下さん？」

納得したように

川波さんが言った。