それでも好きになった。② (ページ25)

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No.75 ページ25

「希望のない相手を、ずっと好きでいるほど木ノ下さんは強くない。

……たとえ好きでいたとしてもいつかは諦める。

そのいつかのときに、

向井がいたら――

すがりたくもなるだろ」

「……たとえそうだとしても、

姉さんのことは関係ないだろ」

「あるよ。

そのことで、余計お前は恋愛に対して頑なになった」

俺は渡辺を睨み付けた。

「……無理はないよ。

お姉さんのことを、

お前は自分のせいだと思ってる。

だけど、あれは彼女自身の問題だ。

どうなっても――

お前が責任を感じるようなことじゃなかった」

「――渡辺、もういい。

姉さんのことは……

これ以上、言わないでくれ」

……思い出すから。

姉さんの笑顔と同時に、

――あの日の泣き顔を。

……あの涙を生んだのは、

間違いなく俺のせいだ。

姉さんが、俺のことを許すことはきっとない。

「……悪い。

だけど、訂正する気はない。

今のは俺の本音だ。

――目黒。

頼むから、そんなに自分を責めるなよ……」

「……心配はありがたいよ。

だけど、お前が気遣う必要はない。

木ノ下さんだって、

……向井を好きになるのも、全て木ノ下さんの意思だ。

他人がどうこう言うことじゃない」

渡辺は俺を睨むように見つめた。

……俺はそれから目を背ける。

木ノ下さんはまだ戻っていないようだ。

そういえば、と思い出す。

川波さんは向井の告白を知っているんだろうか。

川波さんのクラスを訪ねると川波さんは男子と談笑していた。

俺に気づいたらしく、近付いてくる。

「……目黒くん、どうしたの？」

「――向井が告白したんだ。

それも俺が川波さんにあの話をされた後だ。

……何か、企んでない？」

「何の話？」と川波さんは笑う。

「……そっかあ。

向井告白したんだね。

――誰に？」

「……言う必要、ある？」

川波さんは

あはは、と言って微笑む。

「嘘。

分かってるよ。

木ノ下さん――でしょ？」

俺は川波さんの真意を読み取ろうとするが、

笑顔を浮かべている川波さんに裏はなさそうだった。