No.9 ページ9
そのまま私を空き教室に入れ、
目黒くんは無表情で、
制服のポケットから出した
手紙を見せた。
「何これ？」
「………何これって、
書いてある通りだけど」
きっと、怒っているんだろう。
表情は無表情でも、
なんとなく察した。
――でも、どうして？
どうして目黒くんが
怒る理由があるのだろう。
昨日の言葉は、
……ただの気まぐれなんでしょ？
「なんで、やめるの？
昨日、木ノ下さんは俺に
助けてほしいって――
そう言ったよね。
あれは嘘だった？」
目黒くんが言った言葉に、
むっと苛立つ。
「本気だったよ！
でも、
だからって目黒くんが私に
何をできるっていうの？
これは、、他人がどうにかできるようなことじゃないって……
･･･私の問題だって
分かってるでしょ!?
期待させるだけさせておいて……
何もできることなんてないくせに！」
思い出したのは
手を差しのべてくれた人達。
………あの頃の私は
それだけでも嬉しかった。
だけど――
現実は、彼らの望む通りには
いかなかった。
助けはなんの意味もなく――
むしろ激化した形で、
私はその結果を一身に
背負うことになった。
………頼って、
それがなんの意味も持たないなら
最初から期待なんて
しない方がいい。
大声で叫んで、すぐに
取り乱した自分が
恥ずかしくなった。
目黒くんは相変わらず
無表情で私を見ているだけだ。
「………もう、嫌なの！
男子となんて、関わりたくない」
目から涙が溢れた。
それが悔しくて、
表情が変わらないままの
目黒くんが何を
考えているのか怖くて、
私は踵を返して、戻ろうとした。
でも、目黒くんは
私の腕を掴んだ。
「………確かに俺にできることは
ないかもしれない。
だけど、今まで木ノ下さんは、
こんなふうに男子に
大声で責めたりできた？
……頭に血がのぼったからかも
しれないけど、
これも進歩だって思えない？
……俺は冗談で
安易に人を助けるなんて
言わないよ？
言ったからには、
ちゃんと成し遂げたいと思ってる」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月6日 7時
