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No.30 ページ30
目の前でマイクを握り、
相変わらず落ち着いている目黒くんに苦笑する。
「目黒くんって司会者だったんだ。
昨日言ってくれればよかったのに」
湊ちゃんは隠されていたのが不満らしかった。
「まあまあ……
渡辺くんと二人でよくやってると思うよ」
――そう、二人が
この親交会の司会進行を務めていた。
「だいぶ嫌がったらしいよ？
渡辺が土下座したって言ってた」
「そこまで!?」
どれだけ嫌なんだ、と
呆れる。
「……やっぱり恥ずかしがりやだなあ」
私は顔を綻ばせる。
その様子をじっと見て、湊ちゃんが言う。
「……Aってさー
目黒くんのこと、どう思ってるの？」
その問いに、私は少し驚く。
「……恩人だよ。
大切な友達だとも思う」
「……友達かあー」
そう言った湊ちゃんの視線の先には、
司会をしている目黒くんがいた。
「………湊ちゃん？」
「男子と女子の友情って……
やっぱりないのかな」
湊ちゃんはそう呟いて、
まっすぐに目黒くんを見つめた。
「――なんで？
あるに決まってるよ。
……どうしたの、湊ちゃん」
なんでもない、と言って、
湊ちゃんは切なそうに目黒くんを見ているだけだった。
………なぜか、
ひどく胸が痛んだ。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月6日 7時
