No.28 ページ28
「……それで頼みごとって、
なんなの？」
放課後の帰り道、
湊ちゃんは目黒くんを問いただす。
「そんな焦ることでもないよ。
……きっかけが重要なことだから、
木ノ下さんが頼みごとを無意識にしてくれたら、
そのときに教えてあげる」
勿体ぶるなあ、と私は思う。
「あ、私ここでいい」
駅の近くまで来たとき、
湊ちゃんが言った。
「家、学校から近いんだね。
羨ましいなあ」
今度遊びに来ていいよ、と
湊ちゃんが笑った。
「じゃ、また明日ね」
私たちは湊ちゃんに
別れを告げた。
「……木ノ下さん、
なんか面白いことしてよ」
湊ちゃんが帰って、
無言になったかと思えば、
唐突に無茶ぶりをされて、
唖然とする。
「――え？
む、無理だよ。
一発芸とか持ってないから。
……あ、そういえば渡辺くんが明日、
親交会でゲームみたいなのやるって言ってた」
「渡辺が？
へえ……なにするんだろ」
私は目黒くんの言った言葉が
少し引っ掛かった。
「……目黒くんって、
渡辺くんのこと
渡辺って呼んでるんだ」
仲いいの？ と聞いた。
「そういえば
特に意識してなかったけど、
呼んでるね。
渡辺って誰とでも話すでしょ？
だから、くん付けで呼ばれるのが嫌らしく」
理屈はよく分かんないけど、
そのせいだね、と言った。
「……私、渡辺くんのことくん付けだけど」
いたたまれない、と
しょぼくれた。
「……木ノ下さんは
前男子と壁作ってたから
まだ仲良くなってないって思ってるんじゃない？
嫌いだからとか、
そんな理由で言わないような奴じゃないよ。
……たぶん、信用していいやつだと思う」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月6日 7時
