No.16 ページ16
家の自室にあるベットに寝転び、
天井をぼんやりと見つめる。
………私はどうしたいのだろう。
さっき、……心が揺れた。
目黒くんの言葉に、
私は話していいと思った。
でも、すぐに嫌われたくないと臆病な私が顔を出す。
――どうすればいいのだろうか。
分からなくなってきていた。
発端は、彼だ。
あのあと私が黙ると、目黒くんが
「誰だって、
言いたくないことはある」
と前に言った言葉を
もう一度繰り返して――、
「俺はそう言ったよね。
……木ノ下さんは言いたくないことがある。
だけど、それがあるのは
木ノ下さんだけなわけじゃない」
どんな意味だろうと考える私に、
目黒くんは言った。
「加藤さんも……おそらく
木ノ下さんと同じようなこと、
経験してるんじゃないかな」
「――え？」
「………お互いに気を使い合ってる関係なんて、
友達じゃないと思うよ？
木ノ下さんが踏み出せば、
加藤さんはそれに答えてくれるよ」
腕をめくり、時計を見て
「もう行かないと」と
慌ただしく去っていった目黒くんに、
詳しく話を聞くことはできなかった。
湊ちゃんが同じようなことを経験している……
そんなこと、あるのだろうか？
私のように
男子に怯える素振りなんて、
一度も見せたことはないのに。
――木ノ下さんが踏み出せば、
きっと答えてくれるよ。
……ぐるぐると頭のなかを回る
その言葉に、
考えるのが億劫になってくる。
……湊ちゃんは、信頼に値する人だ。
今でも、本当に感謝している。
知らない人ばかりで
全く話しかける勇気がなかった私に、
声をかけてくれた。
――あの頃から、
私は一人が怖くて仕方がなかった。
今の幸せは、あの日湊ちゃんが
声をかけてくれなければきっと存在しなかった。
それを
……どうして
忘れていたんだろう。
………信じられる人だと、
私が信じたい。
私は、明日湊ちゃんに
私が今まで言えなかったことを
告白することを、決意した。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月6日 7時
