No.2 ページ2
顔にかけた冷水で頭を冷やす。
――自己嫌悪だ。
驚いている二人の表情が
頭に焼き付いて離れない。
……悪いのは、もちろん
過去にとらわれたままの自分だ。
「……かといって
忘れようにもなあ……」
忘れられたらどんなに楽だろう。
あのころをなかったことに
出来るなら――。
そう考えた自分を笑う。
……無理に決まっているのに。
顔を拭い、教室へ急いだ。
教室に帰れば楽しそうに
談笑する二人の姿が見えた。
そのことに安堵する。
まず、渡辺くんに
謝らないと。
そう思って近づいた私は
渡辺くんと目が合った。
――うわ。
無意識だった。
はっと気づけば、私は
顔を背けてしまっていた。
一瞬、真っ青になる。
――私、また……。
「悪かった木ノ下さん!」
突然頭を下げ、謝る
渡辺くんに私は状況が
飲み込めず、目を瞬かせた。
「…………え?」
「ほんと、ごめん!
トイレ行きたかったのに
無理させたんだろ?
話は加藤から聞いたよ」
「………ちょっと
湊ちゃん?」
とんでもない勘違いを
されていることに気が付き
元凶らしい湊ちゃんを
睨むと大笑いをしている。
「渡辺くん……
だから誤解だからね」
先程の事件から数分。
笑い続け、話にならない
湊ちゃんを放っておいて
私は渡辺くんに説得を
試みている。
でも、彼は彼で思い込みが
激しいのか、
「大丈夫!
誰にも言わないから!」
なんて、ふざけた言葉を
繰り返す。
……程なく説得を諦めた。
まあ、でもよかった。
――誤魔化せた。
……そう思っていたのに、
その数時間後、
その考えは崩されることになる。
私の後ろの席の、目黒 蓮。
彼がその一部始終をじっと
見ていたことなんて
全く気付かずに、
ただ安堵感でいっぱいだった。
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作者名:いちご | 作成日時:2020年2月6日 7時