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何もしないから、なんて言ってテヨンは
たくさん私を楽しませた。
美味しいものを買ってくれたり、音楽をきいたり、
たくさん楽しい話をしたの。
ずっと車を走らせて欲しかったけれど、
テヨンには目的地があって、
きっと後ろに投げたあの荷物を運んでたんだと後から気づいた。
でもそんなこと、もっとテヨンのことを好きになるだけだった。
さっき触っちゃダメって言ったのは、危険なものから私を遠ざけてくれた気がするから。
そうして何時間走っただろう。
長い距離を走ったのに、あっという間に時が過ぎている。
朝日を浴びながら、テヨンは言った。
「僕はもう行くから、一時間後にでてきてね。いい？まあ君は賢いだろうからよくできると思う。」
…賢くなんかない。
一時間後だって二時間後だって、出てやらない。
行かないでって言ったら、
もっと走らせてくれる？
あんな家に、戻りたくない。
テヨンとずっと一緒にいたい。
テヨンは運転席に座ったまま困った。
それはきっと私が涙をこぼしているから。
ほら、困らせてしまうのは、賢くないでしょ？
「僕もAと走ったの、楽しかったし、絶対わすれないから…ね？」
子どもをあやすように話しかけてくるテヨン。
でも、私を忘れないでいてくれるなら、
またテヨンに会える日まで、生きていたい。
『わたし、テヨンに会いに行く。』
絶対にこれを最後にしたくなかった。
それなのにテヨンは、
「んー、会えるかなー？…ああごめん！泣かないで！」
だって。
綺麗なところ、今度つれていくって言ったのに。
そんなうちに時間が迫りすぎたテヨンは、
「…証拠品になるから何もあげられないからな……」
と言ってドアを開けて周りをみて、
そうしてすぐ、
私の唇にキスをして走って行ってしまった。
そのあと、
私は見つかるまで、
何時間も、泣いた。
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作者名：urru | 作成日時：2021年3月13日 2時
