flashback and dream ページ6
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あの日は祖父の葬式だった。
父の車に乗せられて、実家へと向かっていた道中だった。
この男の隣になど乗りたくないと思ったし、会話もしたくなかったから、後部座席で寝ていようと思った。
ただ車が静かに道路を走る音だけが聞こえる。
ああ、このままこの車が海に沈んでこの男も私も泡になって消えてしまえば良いのに。
そう思って目をつむった。
そうして、どれくらい走っただろう。
灰色に曇っていた空はもう、青く晴れて陽が照っていた。
少し汗をかいてることに気づいて起き上がると、
運転席に、見知らぬ男。
若く痩せていて、でも機敏に動きそうな体つき。
「えっ」
と、声を発したのは男の方。
これは私の夢だろうか。
父ではない男が、父の車を運転して私を乗せて走っている。
『…誰、ですか』
「あ。もしかして、きみ、娘とか？ここに乗ってた奴の。」
…夢じゃない。
しかも、誰なの。
『父は、どこに、』
「…あ〜、どこかはわかんないけど、僕、君に何もしないから安心して。ちょっと車借りてるだけ。君のパパがコンビニ寄るとき鍵かけてなかったからね〜。っていうかそこに君が乗ってるなんて今初めて知った。びっくり。」
……車を借りている？
いや、盗難だ。
でもきっと、変にわめいて騒いでも泣いても、
何も変わらないし、その人はほんとに何もしなさそうな顔で運転している。
信用はできないけど。
「名前なんていうの？」
『…A。』
「ふーん、Aね。僕はテヨン。ちょっと、休憩するね。」
と言って、路線を変えた。
窓の外を見ると今走っているのは、終わりの見えない高速道路。
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作者名：urru | 作成日時：2021年3月13日 2時
