恐怖症94 ページ40
幸「俺は……苦しかった。Aの方が出来ることがあるのに、何でも俺の方が出来るって言われることが。Aの気持ちも知らないで比較し続ける大人が大嫌いだったよ。今も昔も。どんなに比較されてもAの傍にいるつもりだった。
でも……あの日、時遠魁斗と試合した後、鋭い視線が向いていたんだ。それも、俺じゃなくてA。キミに向いてたんだよ」
私は、目を見開いて精市の方を向く。精市はそんなこと気にせずに話を続ける。
幸「だから……突き放すことにした。Aが傷つけられるのは嫌だったから。だけど……それも逆効果だったなんて知らなかった。マネージャーも辞めて、1人で全てを抱え込んでいたなんて思いもしなかった。……元を辿れば、突き放さずに守り続ければこんな風に拗れて、Aに怖い思いをさせなくて済んだのに……。ごめん、A……」
精市が拳を握っていた。力強く。私はその手に自分の手を重ねた。精市は私の方を向いて再び口を開く。
幸「散々冷たくしておいて、虫が良すぎるのはわかっているんだ。でも、聞いて欲しい。……もう、終わりにしよう。こんな関係」
「……」
精市がそう言う。私は黙ってしまった。でも、もう答えは決まっている。
「……終わりにしよっか。こんな関係。前みたい、仲のいい兄妹に戻ろう」
そう言うと、精市は私を見つめている。
幸「「ごめんね」」
私たちは同じタイミングで謝ると互いに笑い合う。そして、私たちはまた皆の所へ戻った。
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作者名:ちゃーきー | 作成日時:2024年2月15日 19時