【黒執事】許嫁に愛を籠めて II【チャールズ・グレイ】 (ページ7)

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#57 毒味の口付けページ7

【信用してはならないのだと】

『どう思う?死者蘇生の話』

「あんな作り話みたいなの信じるワケないじゃん。陛下はあのチビのこと、信用しすぎ」

「確かににわかには信じがたい話だが、嘘偽りの報告を陛下に話すとは思えないな」

『そうね。それが本当なら悪趣味だこと』

ウェストン校でのクリケット大会から数日後。シエルから死者蘇生という驚きの話が出たのだ。それを三人は間近で聞いていたのである。

『……それにしても、』

「ん～?」

『ファントムハイヴ伯爵、数年前の勲章授与式の時よりも立派な面構えになったなと思って』

「そりゃあ、そうでしょ。あの時は右も左も分かんないガキだったし。今もガキだけど」

勲章授与式でも三人揃って陛下の側に控えていたものだ。まだ幾分か幼い顔立ちで。それでいて瞳の中で揺れる暗い炎は変わらない。

シエルのその暗い炎は一体、何を映しているのだろうか。Aはぼんやりとそんなことを考える。そしてエリザベスの哀しげな顔。

それが脳裏を一瞬、横切った。何とも歪な婚約者。きっと二人の関係はグレイとAよりもずっと複雑で重いものなのだろう。

「……そんな顔して何考えてんの?」

『私の許嫁がチャールズで良かったなぁって』

「へ!?……あ、う、うん!!当然じゃん!!」

「グレイ、大丈夫か。顔が赤いが＿＿＿＿＿」

「ちょっとフィップス!!空気読んでよ!!」

「スマン、少し意地悪がしたくなった」

「はぁ!?意味わかんない!!めっちゃカッコ悪いじゃん!!Aもいきなりそういうこと言わないでよ。スッゴク心臓に悪い……」

『ううん、照れる要素あった?』

「A、グレイは何気無い言葉にキュンとくる奴なんだ。だから、」

「だァかァらァ～～～！！」

フィップス真顔で言うせいで、天然なのかわざとなのか判断がつかない。だがグレイがキレてしまうのは必然というべきだろうか。

顔を真っ赤にして両手を振り上げる。ひらり、と降り下ろされた手をフィップスはかわす。それが合図のようにおいかけっこが始まった。

そんな二人が廊下を駆けていく姿を見て、Aはクスリと微笑んだ。今日もまた良い日だろう、と。