【黒執事】許嫁に愛を籠めて II【チャールズ・グレイ】 (ページ11)

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#61 勇者は未だ来ずページ11

【混沌たる世界】

緑の魔女の謁見以来、陛下自ら彼女の元に赴くことが増えた。それに比例して私が彼女の研究に知恵を貸すことも、また増えた。

そして女王陛下が大層お喜びになると同時に、グレイの機嫌が悪くなった。Aはどちらとも言えない思いで彼女の研究を手伝っていた。

「はぁー?マジで意味分かんない」

『チャールズ、これは陛下がお決めになったことよ。何がそんなに不満なの?』

「そりゃあ嫌に決まってるじゃん。ボクのAなのに、あの子供のAみたいでさ!!」

『で、でも仕方ないものは仕方ないじゃない』

「じゃあ、Aは手伝って満足なワケ?」

『そ、れは……』

そう言われると微妙である。あの陛下からの願いだ。嬉しくないわけがない。でも、何故かあの子を見ているとひどく疲れてしまう。

身の丈に会わぬ知識、無垢な年頃には危険すぎる天才的頭脳。接してみればみるほど、彼女と自分の違いを感じた。昔の自分との差を。

『……えっと、』

「やっぱ年下のガキにイイように使われるの、嫌なんじゃん。はっきり言えばいいのに。陛下も無理強いはしないよ」

『そういうんじゃないの！！』

そういうのではない。彼女は自分と他人の頭脳の違いを理解し、己が誰より優れていることを自覚して、その頭脳を使いこなしている。

その頃の自分は周りとの違いがよく分からず、当然のように自分が分かっているのだから大人も分かっているのだろうと思い込んでいた。

父親という自分よりも優れた人が身近に居た、というのもある。つまりは彼女とAの違いは生まれ育った環境だ。ただそれだけ。

『……そういうのじゃ、ないの』

たったそれだけの違いで思い知る。Aが歩んできた道は間違いとは言わずとも、彼女と比べればひどいものではないだろうかと。

それが悔しくてたまらない。