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【星に願いを祈って、】
彼、アダム=ユーリエフとの出会いはまだ幼い頃だった。母であるイデアが二人の孤児を拾い、城で暮らしていけるように居場所を与えた。
それがアダムと弟のソーンだ。二人の兄弟には類いまれなる力が宿っていた。圧倒的強さの水属性の魔法。身体に宿す終焉の獣。
保護という形で王宮に招くには充分な理由だった。そうして二人が此処での暮らしにも慣れた頃。Aはアダムと初めて対面した。
「だ、大丈夫ですか……?」
魔力の制御が上手く出来ず、王宮の廊下の端でうずくまっていたA。それを気にかけ、まだ慣れない敬語で話しかけてきたのだ。
『ど、どなた……?』
「そんなことより本当に大丈夫ですか!?とても苦しそうですが、どこか痛むんですか……?」
『ちが、違うの』
「なら、」
アダムが心配して背中を擦ろうとした時、伸ばした手が振り払われる。その一瞬でAに触れたアダムの手に霜が張り付いた。冷たい。
自分より冷たい体温。触れただけで霜が降りた肌。驚きに金色の瞳を丸くして、顔を見せないAを見つめる。何が起こったのか、と。
『触らないで』
「……」
『貴方まで凍ってしまうわ』
そこで初めてAが顔を上げた。美しい。アダムは声も出せずに彼女の幼いながらも整った顔に釘付けになる。一目惚れだった。
『お願い、放っておいて』
「……いえ、出来ません」
『さっきも言ったでしょう。貴方が凍って死んでしまうわ。お願いだから言うことを聞いて』
「俺だったら大丈夫ですよ」
ゆっくりと魔力を起こし、うっすらと自分に身に纏う。天性の感覚。大人ですら困難であろう魔力操作を意図も簡単にやって退ける才能。
これこそアダム=ユーリエフの真価だ。恐る恐るAに触れる。今度は霜は降りず、じんわりとした冷たさだけが肌に伝わっていく。
突然現れた温もりにAは伏せていた瞳をアダムに向け、困ったような顔をした。そして理解する。魔力での中和だ。同じ水属性の魔力。
『あ、暖かい……』
「俺なら君を暖められる。だから、泣かないでくれ。側に居るから大丈夫だ」
母であるイデア以外に初めてこうして触れられる人間。そんな来訪者にAは嬉しさで泣きそうになるのを堪え、微笑んだ。
続く (更新停止中)
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作者名：セニオリス | 作成日時：2018年10月21日 13時
