浮き沈み七度 1 (ページ10)

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〈三人で、メシ2〉ページ10

そうして三人メシが始まった。
最初はたわいもない話から始まり、趣味の話やら、お互いの学生時代の話、高地と俺の大学の話。ちょっと仕事の話。酒も進みだんだんとシラフじゃ恥ずかしくてできない話になっていく。

「だぁ〜か〜らぁ〜、AはSixTONESで何をやりたいのかって聞いてんの！！！」

　顔を真っ赤にした大我に肩を掴まれぐらぐらと揺らされる。
それを見て優吾はゲラゲラ笑い続けている。
カオス。カオスすぎる。
いくら酒を飲んでも思考が鈍るだけで、理性が残る酔い方をしてしまう俺にとっては地獄。

「俺はこれまでグループに所属したこともないから、とにかくいれるだけでいいんだよ。加入した身だし、みんな先輩だし、歌は下手だからそんなやりたいことなんて大きい声で言えるわけ、ないよ…」
思わず下を向いてしまった。

この頃、グループの仕事量にも慣れた一方で大学が忙しくなり、ルーティン化していた毎日を過ごすだけで精一杯だった。やりたいことなんてすぐに浮かばなかった。

心も体もどこか疲れ切っていたのだと思う。

心の奥にしまい込んで思い出すことなんてないと思っていた「本音」が酔いと疲れのせいだろうか。
チラリ、と顔を出してしまった。

どうせ二人も酔ってるから気にしてないだろう、と思って目の前の二人に目線を戻すと、さっきまでのカオスな雰囲気はどこへやら、真面目な顔になっていた。

「同じグループになって、ようやくタメ口になったと思ったのに、まだ『自分以外先輩だから』とか思ってたの？」

まるで信じられない、という声色で大我が言った。

「……」

「……この機会だから普段言えないことあったら言ってほしいんだよね。だからこの三人になったんでしょ？」
優吾の優しさが痛い。

「……だろうな、とは思ったよ。二人も嫌なほど感じてるでしょ？俺がほぼ思ってること言ってないって」

「俺はそれが気に食わないの」
　
「実際早い段階で本音言ってないってこと、樹にはバレてると思うよ。言葉で誤魔化してるつもりだけど、それさえもバレてるんじゃないかな」
滑稽な自分を嘲笑うかのように言葉を続けた。