〈レッスン場の一コマ〉 ページ35
過去編。きょもいお。
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こういう仕事をしているからこそ、学業もきちんとしなければいけない。
テスト前となると、レッスン場でも教科書やテキストを開く人が増える。
そういう俺も例外なくノートや教科書を開いていた。
「〜〜っだーーわっかんねーー」
隣では早速勉強に飽きたやつが騒いでいる。
「……A、それ何読んでんの？」
遅れてやってきた北斗が隣のテーブルで声をかけているのが目に入った。……ああ、あいつは。
AA。
ダンスならジュニア一番。
どんなグループのバックにもつけるし、他の人のポジションにも入れる。
それだけで他のジュニアに目をつけられてるんだが、実は勉強もできる。芸能活動に理解があるとはいえ、普通の高校に通っているので、俺らなんかよりよっぽど忙しい。
「あ、北斗おつかれ〜。これ？ただの英単語帳だよ？毎週小テストあんの」
「うわなにこれ、こんな単語見たことねーよ」
「でも例文が面白いからそっちの日本語訳ばっかり覚えちゃうんだわ」
「だめじゃん」
いったいどんな英単語だよ。
二人がきゃはきゃはと笑っている。
すると俺の視線に気がついたのか、北斗がこちらにやってきた。
「京本おつかれ」
「おー」
「めずらし、勉強してる」
「テスト前なんだよ。お前もだろ」
「そうでした」
学校は違えど、だいたいテスト期間はかぶる。
「そうだ、Aに聞きたい問題あんだわ」
北斗がカバンからノートを取り出して、再びAのところへ向かう。
「俺でわかる問題ならいいんだけど」
「嫌味か？頭のレベル考えろ(笑)」
「わりー(笑)あーこれ？懐かしー。これはねー……」
集中力が切れてしまったのでこっそり北斗の隣に移動して共にノートやらテキストやらを覗く。
Aの説明はわかりやすく、あっという間に理解できてしまった。
「A先生！ありがとう！」
「先生って(笑)そりゃどーも」
「……ねえ、A」
「は、はい、京本くん、どうしました」
「俺にも勉強教えて」
「え」
「あとAの方が早生まれだけど、同い年だよね？タメでいいよ」
「……努力しますがすぐには無理だと思いますよ？」
実は勉強を教えている間だけ、Aはタメ口になっていたのだが、最後まで彼はそれに気づくことはなかった。
そんな感じで、俺もAに勉強を教えてもらうようになった。
徐々に「Aの教え方がうまい」と評判が広まり、彼は「みんなのA先生」になっていった。
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作者名：八郎 | 作成日時：2023年8月2日 21時
