浮き沈み七度 1 (ページ14)

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〈三人で、メシ6〉ページ14

「結局、棚ぼた式に手に入れたものを、自分の手で失うのが怖かったんだよ。もし、SixTONESになった後に俺が辞めたら、その選択が誰かの覚悟を揺るがすような可能性になるのなら、それだけは嫌だったんだよ」

「馬鹿」

馬鹿？聞き間違いじゃないよな？

「ばっ……？」
「馬鹿って言ったの。俺たちどんな経験してきたと思ってんの。それこそ辞めてったのは何十人も見てきたし、グループ組んでも解散したり、デビューできなかったりなんて当たり前だったじゃん。それでも負けないでここまできたの。俺たち舐めんな」

初めて聞いた、大我の怒ったような声だった。
そりゃそうだ、あの大男たちを疑うようなことを考えていたのだ。

「確かに俺も何度も辞めたいと思った。でもその度に誰かに説得されたりして、今ここにいる。他のメンバーだってそうだと思う。SixTONESにAが加入するって聞いて、俺たちは誰もAを否定しなかったでしょ？ある意味それが答えだよ。俺たちはAが思ってるよりAがこのグループに必要だと思ってんの！」

捲し立てるように言い放った大我はグラスに残っていたワインを一気に飲んだ。

おい、さらに酔いが回るぞ。

「だから、だから、お願い、いなくなんないで、歌でめちゃくちゃ苦労してるって知ってるけどさ、その分俺にはAみたいには踊れない。だからさ、Aが抱えてるものも一緒に背負わせてよ！」

向かい側に座っていた大我がいきなり立った。そして俺のところに来ると、いきなりハグされた。

「大我……」
「絶対離れないから」

細い腕がぎゅうぎゅうと俺の体を締め付ける。
あれ？こんな熱い男だったっけ？
目をぱちくりさせて優吾に助けを求める。

「きょもって見た目に反してめちゃくちゃ男っぽいよね〜」
いつの間にか水を飲んでいた優吾がしみじみと語る。
おい、助けてくれよ。

「……そうだね……。あと、俺に対してそう思ってたんだ……」

「当たり前じゃん！何なのあの動き！慎太郎やジェシーもうまいけど、それとはまた別のタイプの踊りだよね。うちの中で唯一無二」

「めちゃくちゃ褒めてくれるじゃん」
「めちゃくちゃAのこと好きだからね」
「普段からそうしてくれればいいのに」
「お互い様だろ」

熱いハグをしながらやんややんやと言い合いをしているうちに面白くなってしまい、俺と大我は笑いあってしまった。