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…数日前に、我妻さんが言っていたことが忘れられない。
ずっと考えてた。時透君のことを。
我妻さんはああ言ってくれたけど、
無事に帰ってくるかもわからない。
長い間会ってないから、もう私のことなんて忘れてるかもしれない。
気持ちを伝えたい。
でも、それは彼にとっては迷惑なの。
困らせるだけなの。
私は、してはいけない恋をしてしまった。
それでも、どうか無事でいてほしい。
竈門 「あ!A!」
A「竈門君。」
いつものように蝶屋敷に通う。
カナヲちゃんが、
私が来る時間帯になると蝶たちを虫籠に入れてくれているからよく来れるようになった。
我妻さんは、もう機能回復訓練を始めているみたい。
…だったのだけど…。
今は来なくなってしまったらしい。
同じように嘴平君も。
二人が来なくても頑張っている竈門君は偉いと思う。
竈門 「これから、なほちゃん達がおにぎりを作ってくれるそうだから、
Aも一緒にどうだ?」
全集中の呼吸をしながら竈門君は言う。
A「私は食べてきたから。」
竈門 「そうなのか。」
竈門君は縁側に座った。私もその隣に座る。
A「我妻さんたちはどうしてるの?」
竈門 「病室でのんびりしているよ。」
A「無理矢理にでも連れていけば?」
竈門 「行きたくないと思っている人を無理に連れて行くなんてあんまりだろう。」
やっぱり竈門君は優しい。
私とは違う。
竈門 「…Aは、大丈夫か?」
A「え?」
竈門 「最近、Aからずっと悲しい匂いがするんだ。
苦しそうな、泣きそうな匂いが。
それが日に日に強くなっていってる。」
竈門君は鼻が利くんだっけ。
バレバレじゃないか私。
竈門 「…実はこの前、善逸に聞いたんだ。
Aのこと。」
我妻さん、話したの?
竈門 「Aが、好いている人に会えていなくて寂しい思いをしていることを。」
胸がズキリと痛む。
竈門 「…俺が言っていいのかはわからないけれど、
彼は本当にAのことを大切に思ってる。」
その言葉、我妻さんにも聞かされた。
そんなの知ってるよ。
大切に思ってくれていなきゃ、髪飾りだって着物だってくれない。
逢引なんて誘ってくれない。
いつもの無表情が、笑顔になることもない。
そんなの分かってる。
そうじゃないの。
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