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病室を出ると、胡蝶さんにばったり会った。
 
とても苦しそうな笑顔で私を見た。


そんな胡蝶さんの隣には、カナヲちゃんもいた。

 
胡蝶 「…A。」

A「…はい。」


できる限り笑顔で返事をした。

私が元気でないと、二人は余計に辛くなると思ったから。



胡蝶 「…本当にごめんなさい。」




A「?なんで謝るんですか?」


胡蝶さんは何も悪いことをしていないのに。



栗花落「…違います。

私が悪いの。ごめんなさいA。」


どういうことだろう。



胡蝶 「私があの血鬼術を避けずに受け止めていれば…

あなたに命の恐怖を与えてしまうことはなかった。


全ては私の責任です。

こういうことを想定して私に頼んでいた時透君にも、

このような体になってしまったあなたにも、

とても…申し訳無い…。」


胡蝶さんの瞳から、きれいな雫が落ちた。

 
栗花落「違いますよ師範。

あの場にAを連れて行ったのは私なの。

私のせいでこんなことに…。」


カナヲちゃんもつらそうに耐えている。

…そんなこと、考えたこともない。


A「何言ってるんですか。


私は、お二人に感謝しています。

無理を言って付き添っていただいて。

時間帯から考えて、鬼が出るかもしれないと思っていました。

でも、なんとかなると、軽い気持ちで出掛けてしまった私が悪いんです。



お願いですから、

自分を責めないでください。」


時透君から約束されていたことは守った。



その約束の目的は果たせなかったけれど。





ごめんなさい。

私は、先程の診察で、




長くて半年と言われました。






でも、これは絶対じゃない。

余命宣告をされた人が、

宣言された年を遥かに上回って亡くなった人だっている。


そんな奇跡を信じるよ。

少しでも可能性があるなら、信じないと。


『可能性』という言葉の意味がなくなるから。


時透君と一緒に、まだ生きていたい。

お店を今まで通りやりながらだと、

無理かもしれないけれど。


あの場所は、誰にも譲りたくないし、


私の大切な居場所なの。



みんなに初めて出会った場所。

みんなとたくさん笑いあった場所。



時透君が、君の居場所だ、と言ってくれた場所。



私の家。



たくさん思い出の詰まった場所。


私は、この身に何があっても、


あそこにいたい。




気づけば私は、胡蝶さんとカナヲちゃんを抱きしめていた。

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作者名:照山紅葉 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年11月1日 0時

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