第203話 ページ6
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貴方side
………夢だ。
これは夢だ、一番見たくない嫌な夢。
自分の頭をいじれるなら、真っ先に消し去りたい記憶。
ずっと昔の話ではない。まだ二、三年前のことだ。
……ボクが
…ブツッ
『…っ!』
尻尾に走る痛みと共に意識が浮上する。
眉を顰めて瞼を開ければ、いつの間にかベッドで寝ていたらしく、仰向けのボクにキリヲが跨っていた。
気配を感じ取れなかったことから察するに、おそらく睡眠系の薬か魔術で眠らされていたのだろう。
「起こしてしもた?」
ボクの顔を見て眼鏡は悪びれもせずに柔らかく、しかし気持ち悪さを漂わせながら笑んでいる。
キリヲの手には針とボクの尻尾があった。
『……何してるの、』
凡そ察しのつく疑問を投げると、案の定の答えが返ってきた。
「僕の印をつけてたんよ。」
ほら、と言って尻尾から手を離すキリヲを睨んで、自分の尾を見つめる。まだ痛みの残るそれには先の方にピアスのようなものがつけられていた。
『……君ってつくづく趣味が悪いよね。』
「ふふ…っ、そんなら首輪もつける?
僕のAちゃんて分かりやすいように。」
わざとらしく疑問形で尋ねてくる眼鏡に嫌気が差す。
" 首輪もつける? "
馬鹿馬鹿しい、どうせ……
『ここにいる限り、ボクに拒否権なんてない…
そう教え込んだのは君でしょ。
いちいちボクに訊かないで。』
以前の 監 禁 生 活 でのことを嫌味たらしく言えば つれへんなあ、と満更でもないように溜息を零してキリヲは何か衣服のようなものを取り出した。
「さてと……そろそろ時間やね。
Aちゃん、これに着替えたら兄さんとこ行こか。」
差し出された服を黙って受け取りキリヲを見れば、依然としてにこやかに笑んでいる。
……今すぐ殺したい
なんて言葉は我慢して、別の嫌味を考える。この悪魔を前にすれば、嫌味なんて思考するまでもなく石油のように溢れてきた。
『君が部屋の外で待っている間にボクが逃げているかもしれないよ?』
「…?何言うてるん?
僕は一言も " 外で待つ " なんて言うてへんけど。」
………、
…………………、
『はぁ………今すぐ殺したい…』
「声に出てんでAちゃん。」
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紫咄(プロフ) - ティアさん» コメントありがとうございます!面白く新鮮な話を書くのが作者の目標なのでとても嬉しいです✨これからも頑張ってまいります! (4月2日 0時) (レス) id: 0a579820f3 (このIDを非表示/違反報告)
ティア(プロフ) - 春休みなのでシリーズ最新まで一気見しました!!すっっっごく面白いし泣いてしまいました………続き楽しみに待ってます!!頑張ってください!!! (4月1日 7時) (レス) @page31 id: 9f0c7fadf2 (このIDを非表示/違反報告)
紫咄(プロフ) - 夕宙さん» ありがとうございます!シリーズ1からは嬉しいです…泣作者の書きたい放題に思案しながら書いているのでとても励みになります!これからも頑張ります! (3月9日 15時) (レス) id: 0a579820f3 (このIDを非表示/違反報告)
夕宙 - シリーズ1から読ませてもらってます。無性くんのキャラというか性格というか、とにかくキャラ設定やストーリー大好きです(語彙崩壊)。続きが気になる……!これからも頑張ってください!応援してます。 (3月9日 13時) (レス) @page21 id: 6731466818 (このIDを非表示/違反報告)
紫咄(プロフ) - 久遠さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉✨作者もエイト先生は大好きです!これからも頑張ります! (3月5日 20時) (レス) id: 0a579820f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫咄 | 作成日時:2024年2月11日 21時