第２２７話 ページ30
〜
貴方side
早朝、目が覚めると就寝前に見た師匠の姿はなかった。
…あっても困るが。
師匠の寝床へ行けば案の定そこで眠っていて、深い眠りに落ちているのかボクが近づいても起きる気配はない。
……あ、
何となしに眺めていると、師匠の身体にある真新しい傷跡が目に入った。
『怪我…まだ治ってないんだ、』
それもそうだ。殺し合ってからまだ一週間も経っていないのだから。ブルシェンコ先生に診てもらったのだろうが、完全に傷がなくなるのはあと数日後くらいだろう。
一時間で完治するボクとは違う。
……もう
なんて思いつつ、はらりと頬に垂れる師匠の黒髪に触れた時、何の前触れもなくボクの手が温かく大きな手に掴まれた。
「朝から何してるの……、」
寝起きが良いとは言えない師匠の、いつもより少し低い声と顰められた目がボクに投げられる。彼の問いになんて答えようか思考を巡らせ、自分の声が自然と小さくなった。
『…………綺麗だなと思いまして。』
「……んん、なんて？」
思考したのにも関わらず見当違いな回答が勝手に零れ落ち、師匠の声で我に返る。ボクはまだ寝惚けているのだろうか。
『…いえ、何でも。』
寝惚けたまま頭上に疑問符を浮かべる師匠にそういえば伝え忘れていたことを思い出す。
『気にしないのでまた吸っててくださいよ、タバコ。』
「……ん？え、？」
そう言うとボクは学校へ行く準備を始める。まだ回らない頭でボクの言葉を理解した師匠は当惑の声を上げていた。
ツムルside
「Aさぁ……何かした？」
『随分抽象的ですね…、』
昼休み、バラム先生の準備室を借りてAと昼食を摂りながらそんな話を切り出す。ここ数ヶ月めっきり煙草を吸わなくなっていた同僚が何もなかったかのようにまた吸い出したのだ。
しかも妙にご機嫌だったし、
数日前までの凶暴さは嘘かのように目の前の生徒は 特に何もしてないと思いますけど、などとフルーツサンドを頬張っている。
「まぁいいや、本題に入ろう。
数ヶ月分の授業の遅れをとってるしな、Aは。」
最後の一口を飲み込んだAは そうですね、と静かに肯定した。どうやら話す気はあるらしい。
「それじゃあ聞こうか、
…………襲撃の目的とキミの身に起きた出来事を。」
〜
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 247人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫咄(プロフ) - ティアさん» コメントありがとうございます！面白く新鮮な話を書くのが作者の目標なのでとても嬉しいです✨これからも頑張ってまいります！ (4月2日 0時) (
レス) id: 0a579820f3 (このIDを非表示/違反報告)
ティア(プロフ) - 春休みなのでシリーズ最新まで一気見しました！！すっっっごく面白いし泣いてしまいました………続き楽しみに待ってます！！頑張ってください！！！ (4月1日 7時) (レス) @page31 id: 9f0c7fadf2 (このIDを非表示/違反報告)
紫咄(プロフ) - 夕宙さん» ありがとうございます！シリーズ１からは嬉しいです…泣作者の書きたい放題に思案しながら書いているのでとても励みになります！これからも頑張ります！ (3月9日 15時) (レス) id: 0a579820f3 (このIDを非表示/違反報告)
夕宙 - シリーズ1から読ませてもらってます。無性くんのキャラというか性格というか、とにかくキャラ設定やストーリー大好きです（語彙崩壊）。続きが気になる……！これからも頑張ってください！応援してます。 (3月9日 13時) (レス) @page21 id: 6731466818 (このIDを非表示/違反報告)
紫咄(プロフ) - 久遠さん» コメントありがとうございます！とても嬉しいお言葉✨作者もエイト先生は大好きです！これからも頑張ります！ (3月5日 20時) (レス) id: 0a579820f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫咄 | 作成日時：2024年2月11日 21時
