検索窓
今日:7 hit、昨日:98 hit、合計:181,919 hit

第30話 ページ31





貴方side



消毒液の匂いと、タバコの匂い。

とてもその場には矛盾している二つの香りが、ボクの目を覚まさせた。
想像通り、目を開ければそこは医務室だった。





『……ここ、禁煙ですよ。




________イフリート先生、』





名前を呼ばれたからか、それともボクが目覚めたことに対してか、黒髪の悪魔はにこりと笑んだ。





「煙草でも吸ってなきゃ落ち着いてられないからね、」





『呼吸するように虚言を吐かないでください。』





「本当なんだけどなぁ…。」





満更でもないようにしょぼくれた先生がボクの寝ているベッドに腰を下ろし、それで?、と煙を吐いた。





「僕はキミになんて言ったっけ?」





『…………。』





想起するほどでもなく容易に思い出せるが、それを素直に聞いたかと言えば答えは否だ。

居心地の悪さにボクは視線を逸らすと、反省を促すように先生は続ける。





「言ったはずだよ、" 危機感を持ちなさい " と。



…………………………それとも、」





人差し指と中指の間にあったタバコが一瞬にして小さな炎に巻かれ影もなく焼失し、枕元に片手を着いた先生が顔をぐっと近づけた。



 ……………近



つい最近キリヲ(あいつ)に魔力を吸い取られたトラウマが一瞬よぎり、ボクは目を合わせないように逸らし続ける。
いつもより近くで香る先生の匂いによく分からない奇妙な感覚を覚えていると、先生が布団を剥ぎボクの腹部を服の上からなぞる。





「…………君には特別授業が必要かな?」





『…………っ、』





嫌でもキリヲ(あいつ)との記憶が重なり、反射的にベッドから飛び出し臨戦態勢に入る。





『必要ないで、す……?』





 …………あ、まずい



 ……………………気づかれる(・・・・・)





「………………あれ?」





瞬時に自分の起こした行動を後悔した。
知らない薬を打ち込まれ、魔力を大幅に奪われた挙句の魔術の使用と戦闘、今のボクの状態はどう考えても " 絶対安静 " の身であるはずだからだ。

身体を動かすことなんてできるはずがない、とボクを除き誰もが思うはず。





「なんでキミ、動けるの………?」





『………これは…、』





ベッドの上で唖然とする先生に何か筋の通った嘘を即興で並べようとするが、どうにも思いつかない。

その時、





「あーーっっ!!」



第31話→←第29話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (188 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
444人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紫咄(プロフ) - もこさん» コメントありがとうございます!全員推し分かります!皆が皆良いキャラでいくら書いても書き足りないくらいです笑これからも更新頑張ります! (6月7日 19時) (レス) id: a9de1191b0 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - 初コメ失礼します!私愛され大好物なので嬉しいです!魔入りました入間くんのキャラ全員推しなので嬉しいです!更新頑張ってください! (6月7日 19時) (レス) @page5 id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
紫咄(プロフ) - ガイさん» ありがとうございます!頑張って執筆しますのでまた読みに来てくれると嬉しいです! (2023年4月30日 14時) (レス) id: a9de1191b0 (このIDを非表示/違反報告)
ガイ - 面白かった。←いつもは、こんなキャラじゃありません!!(*/□\*)かぁ〜// (2023年4月30日 14時) (レス) id: 5793000cce (このIDを非表示/違反報告)
紫咄(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!とても励みになります!これからも頑張って執筆していきますので読んでいただけると嬉しいです。 (2023年4月7日 23時) (レス) id: a9de1191b0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紫咄 | 作成日時:2023年1月1日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。