支えられる喜び／九条貴利矢 ページ42
震える手を空いているもう一つの手で抑える
冷や汗が滝のように流れる
私の手には銀色にギラギラ光るナイフが握られている
今から私は罪を犯す
「っや、やめてくれぇ……、！」
「今更……その態度…………？」
怒りで声、体全体が震え目の前の男に近づく
「人の痛みも分からない人間が！！」
目の前に居る男は私がこの世で最も憎い相手だ
その理由は…………
私のお姉ちゃんを殺したからだ
元はお姉ちゃんと付き合っていた男で。
こいつがお姉ちゃんを裏切るようなマネをして、その後の揉め合いでお姉ちゃんは………………
「お姉ちゃんは……どれだけ辛い思いをして最後を迎えたか分かるか……！？」
「ひぃっ、お、俺は悪くねぇ…！！だいたいあいつがしつこかっただけだ！！あいつが死んだのだって……た、ただの事故に過ぎねぇんだよっ！！」
「はぁっ……ふぅっ………………」
「もういい……痛覚があるうちに後悔でもしてろ」
Aの目にはもう何も写っていなかった
罪悪感やこれから犯すことへの恐怖があったが怒りで我を忘れてしまったAはただ上振り上げ下に下ろすという動作を行うところだ
「A！！！！やめろ！！！」
そんな声が聞こえた
「ひぃっ！！！」
ナイフが男の太ももにギリギリ当たるか当たらないかくらいの位置で静止した
Aの目は一瞬だけ揺らいだ
「……なんのよう………………貴利矢……」
「姉ちゃんはそんなこと望んでない…」
「そんなの、分からない……」
Aと貴利矢が話している隙をつき目の前の男は貴利矢に駆け寄った
「た、た、助けて下さいぃ！！！殺される……！殺される！」
「落ち着いてください…」
九条貴利矢はその男を落ち着かせ、Aに向き合った
「貴利矢、どういうつもり……？」
「……誰もお前なんかに犯罪は犯して欲しくねぇよ」
「うるさいっ、いいからそいつを早く渡して」
そう言って貴利矢にナイフを向ける
「自分に勝負挑もうってのか…？笑」
「…………よく笑ってられるね…」
「お姉ちゃんの仇をとる。だから早く……！！」
「A、落ち着け」
Aとの距離を少しずつ縮めていく
「姉ちゃんはお前に人殺しになって欲しいなんて思ってない」
「なんであんたが……そんなこと言えるわけ……？」
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作者名：名無し | 作成日時：2023年2月24日 7時
