吊り橋効果／九条貴利矢 ページ37
夜の11時30分
そんな時間まで私は残業していた
なんでかって言うと、自分のミスで作りかけの資料を全部取り消しちゃって何とか復元した……
こんな時間まで残ったことがなく、CRで働いているみんなはとっくに帰ってしまった
正確にはまだ他の場所で作業してる人も居るけれどこの地下のCRには誰も居ない
怖がりな私からすれば誰も居ない地下って思うだけで叫びたくなるのだが、11時や病院ということも考えてそんなことは出来ない
意を決して帰る準備をした
「お疲れ様です……」
誰も居ないオフィスに挨拶すると電気を消し、歩き出す
「暗いし、怖いしぃ………」
気持ちから負けるとダメだよね……？
何か明るくなることないかなぁ
そう考えて鼻歌を歌うことにした
「〜♪……」
ちょうどサビが終わって、怖いことなく病院の出口の近くまで来ることが出来た
「やっ、と帰れる〜……」
そんな時、後ろの方から足音が聞こえた
やばっ、と考えた時にはもうすでに真後ろにその音が迫ってきており、どうすることも出来なかった
恐怖で埋め尽くされ動くことも出来なかった
「あれぇ？A､こんな時間まで何やってんだ？」
「はっ……」
その声を聞いた瞬間、安心しきったのか全身の力が抜け、目が熱くなった
声の主は恋人である貴利矢のものだった
「もっ、びっくりさせないでよぉ………」
「？ってなんで泣きそうなの!?」
「貴利矢のせいだし……」
「はぁ……自分のせい？大丈夫か？」
そういい私の頭を撫でてきた
「今帰るの……？」
「おう、一緒に帰るか？」
「うん……」
そういうと貴利矢は自然に恋人繋ぎをして歩き出す
久しぶりで少し緊張しているのは内緒だ
「夜の病院ってなんか怖いな……笑」
「私この中1人で来たんだよ!?すごくない!?」
「ははっ笑それよりなんでこんな遅い時間に帰ってんの？」
「仕事の資料作ってたの」
「ほぉ〜ん…」
聞いておいて全く興味の無さそうな返事が返ってきた
「ていうか、最近こんなことしてないけど次デートいつ出来るの？」
恋人繋ぎをしている手を見せ、尋ねてきた
「まだ予定が分かんないから、ごめん決められない」
「ふぅ〜ん、ベタだけど、仕事と自分どっちが大事なの？」
突然そんなことを聞いてくるせいで驚いた
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作者名：名無し | 作成日時：2023年2月24日 7時
