正義のヒーロー達の中・短編集 (ページ14)

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ホントの気持ち/九条貴利矢ページ14

「ばか…………！」

女が男に向かって叫ぶ

その様子は傍から見れば、別れ話、喧嘩、などマイナスな話を連想するだろう

あながち間違ってはいないけれど……。

男はヘラヘラしていた

「もっと……もっと自分の体を大事にしてよ……！！」

「大丈夫だって言ってるでしょ？」

「大丈夫だとか言って、一度死んだのは誰!?」

「自分で抗体を作るとか……！医療に身を捧げるとか！」

女は……Aは目に涙を浮かべて訴えていた

「どれだけこっちが不安だったか分かんないでしょ……？」

男は……九条貴利矢はヘラヘラした態度から一変し、真剣な眼差しに切り替わった

「……Aちゃん。そんなこと言われてもこれが自分の仕事だから」

「っ、仕事だからって……」

「Aちゃんも分かるでしょ？どれだけ仮面ライダークロニクルが大変だったかなんて」

「そんなわがまま言う子じゃないだろ？」

子供に言い聞かせるように笑顔は崩さず、それでも困ったような悲しいような表情でAの頭を撫でた

「……私のわがままだよ…………。バグスターウイルスのせいで大変だったことも知ってる。こんなこと言っても聞いてくれないことも知ってる」

「でも、嫌なの…………」

胸が苦しくなり涙が溢れてくる

「なんで、貴利矢が苦しまないと、いけないの？」

ストレートな質問に困っていた

「そりゃぁ…ヒーローだし、自分が頑張らなくちゃいけない場面は多々ある」

「危険を伴っても自分達は戦わなくちゃいけない」

ハッキリと言い切った

「っはぁはぁ…嫌だっ…」

本当はこんなこと言いたいはずもなかったが、わがままな気持ちのまま言葉にしてしまった

「私、はっ、貴利矢の事が、心配でっ、不安で、また帰ってこないかと、思ったらっ……」

目から溢れる涙を見せないように手でこする

「あぁあぁ……そんなにしたら目が真っ赤になるよ？」

「せっかくの可愛い顔が台無しになっちゃうよ？」

どんな状況でも冗談を言う男であったと再確認したが、こんな状況でノセられるわけもなかった

「……まぁ、こんな顔にさせたのは自分だけどな」

「……ごめん」

「っ……」

やっぱり、私がわがままなんだよね…………

「私も、ごめんなさい……これからはちゃんと貴利矢のこと、ちゃんと応援する…」

自分の心に嘘をつくしかない

貴利矢がよく言う、嘘をついた方がいいってこういう事だろうか

事実だけが良いこととは限らない

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