【中原中也】猫被り彼氏をぶん殴る。【文スト】

小噺 青年Nの甘え方 ページ26

＿＿＿＿＿時刻は夜。

久々に早くに帰ってきた中也(ヘロヘロのくたくた)と夕飯を一緒に食べ、じゃんけんで負けた私が皿洗いを終えた頃。






ふらっとワインセラーの奥へ消えていった中也が、なかなか良さ気な(まあ此奴が呑むヤツで外れはないけど)ワインを手に戻ってきた。


手を拭く私の後ろを通り、ぽんと肩を叩いてく。
それで察した私は、即座にスマホを手に取った。





「今日何かおもしれぇモンやってたか？」






『知らんわ
どーせなら撮り溜めてたやつ見りゃいいじゃん』






「あー…そーすっか」






どかっとソファに座る中也、唐突に体が浮く私。そのまま中也の方へふよふよと空中飛行(強制)。

私を自分の膝の上に乗せると、漸く中也は異能を解除した。


ぎゅう、と腹に回った手に力が籠る。





「あー……肉があって柔けェ…」






『お前は素直に甘えらんないのか？
まず異能を使って人を呼び寄せンなや』






「うるせェ抱き枕だな」







『誰が抱き枕だこら』







云いながら足を胡座のような形にし、手足をフルに使って私をがっちりホールドする中也。肩に顎乗せてるせいでかかる髪の毛が擽ったい。




中也がリモコンで録画番組を探し始めたのとほぼ同時に、私も手に持った携帯の電源をつけた。

ゲームを起動して、後ろの甘えん坊に体重を預ける。


番組が始まり、リモコンを持っていた手がまた私に巻き付く。そこから沈黙。






中也はTV、私はゲーム。お互い会話もないし、やってることもバラバラだけど、これが時たまくる中也の甘え。





「…………」






無言で私の髪を弄り出す中也。髪を梳くような此奴の触り方は存外心地よかったりもする。





『ワイン呑まなくていいの？』





「あ？…あー忘れてた……呑むからそこのグラス寄越せ」





仕方なく取ってやろうと体を前に傾けると、
くっついたまま同じようにして体を傾けてきた。
お前どんだけ私と離れたくないんだよ。





『あいよ』




「ん」





器用にコルクを外して私の手中のグラスにワインを注ぐ。一度軽く栓をしてからワインを起き、グラスを手に取った。





「あー…これ美味え」





中也の喉仏が動く。「呑むか？」と出されたから一口貰った。確かに美味しかった。






『これいいね、スッキリしてる』





「…どーせなら他のも開けるか」





『呑みすぎ注意ね』





「おう」





……結局、二人とも酔ってそのまま寝たのはまた別の話。

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