【中原中也】猫被り彼氏をぶん殴る。【文スト】

暴言十 ページ12

そして誰もいなくなった。


……嘘です中也と二人きり。






「………」






『…………』







無言で見つめ(睨み)合う。
目線は逸らさぬまま、私はカウンターの上にそっと封筒を置いた。


中也も私から目を逸らさずに封筒を手に取ろうとするから、すんでのところで上に持ち上げる。








「おい、寄越せ其れ」








『私の質問に答えてからなら良いよ』








ぴくり、中也の指が動く。
頬杖を付き珈琲を一口啜ってから、「なんだよ」とぶっきらぼうに言い放つ其奴。


無愛想な男は女にモテませんわよっ(何処ぞの委員長風)






『こんなわかり易い依頼してきた癖に、私が気づいてないとでも思ってる？』








「別に、首領もそこ迄手前を侮っちゃいねェよ」








『……中也は？』








「豚にも多少は思考力有ったンだなって驚いてる」







『糞野郎この野郎』






……で、質問についてだけど、と話を戻す。このままいつものペースになると何も聞けないだろうからね。









『三組織間で異能力戦争でもやる積もりでしょう？』







「……そりゃ質問じゃなくて確認だろ」








『ま、確信持ってるからそうとも云えるね』







一度椅子に腰を下ろし、先刻国木田お母さんにサンドイッチ作ったとき次いでに用意したカフェオレを
一口飲み下す。

……うん、うまい。







「何処迄知ってる」






『…異能力戦争に関わる三組織がポートマフィア、武装探偵社、組合(ギルド)だってこと

この戦争の引き金になったのが探偵社に新しく入った虎くんだってこと

各組織の大まかな情勢

まだ腹の探り合いだから良いけど、本格的に始まれば横濱がどうなるか分からないこと

此の侭いけば、マフィアが優勢に立てるであろうこと、それと


組合の長が此の戦争を起こした理由』







指折り挙げて言って、今はこのくらいだと告げた。
中也は少しの間目を見開いていたが、すぐに腹の見えない笑みを貼り付ける。








「猫はなんでもお見通しってか」








『猫は最高の情報屋(バイブル)だからね、私は唯の伝言人みたいなものだし』






「知ってる」






『偶には少しくらい私に優しくしてもいいんじゃない？』








私も中也も一口ドリンクを飲む。
カップを置いて、中也が目線を逸らしつつ口を開いた。








「そンだけ知られてりゃ言い訳はできねェな」







「そうだよ、近々戦争する積もりだ」








…嗚呼、矢っ張り。

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