哀

31 ページ35

『しつれいしまーす。』



ベッドに突っ伏すと、はるおが覗いてきた。


晴美『なーに。またサボりかー？』


いつもの様に明るくて少しゆっくりと喋ってくる
はるお。声でも分かるニコニコ笑ってるのが。




『違う。…マジのやつ』


晴美『やっとわかったか。保健室の使い方が。』


『うん…。』


晴美『なに。どうしたの。』



何かを察した様に聞いてくるはるお。
そういう所はお姉ちゃんらしくて好き。



『…恋の病ってやつ。』



晴美『わぁ。やっと来たか。春が。
わぁ。良かった…。』




何を思ってんのか知らないけど、

1人でひたってる。それも声でわかる。



晴美『で？どんな人なの？』


って、興味津々に聞いてくるから、


渋々答えた。



『私に似てるひと…。オオカミっぽいけど、
すごいお節介で、人の心に入り込める人。
笑顔が可愛い。』




晴美『何。どっぷりじゃん。』



『…でも、その人には彼女がいる。
年上の。』


昨日のことが蘇ってくる。
何かが。頬を伝った。



晴美『それ。ちゃんと聞いたの？
間違いかもしれないよ。』



『今日来てない。』



晴美『…そうかー』



『寝る。』



晴美『ん。寝てな。』



そう言ってベッドから立ち去った。




私は静かに泣くことしか出来なかった。

32→←30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す