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高木side
伊野尾＞裕翔！！
伊野尾くんの鋭い声に後ろを振り返ると、仰向けに倒れていく裕翔を、伊野尾くんがかろうじて支えている状態だった。
高木＞え、裕翔？大丈夫？
薮＞熱あるっぽいぞ、これ。
伊野尾＞医務室行こっか、歩けそう？…ん、そっか。
じゃあおぶるね。
裕翔の返事は聞こえなかったけど、伊野尾くんの返答から察するに、動くのもきついんだろう。
薮＞行ってくるわ。
あまり人数が多くても良くないだろうと、薮くんと伊野尾くんの2人が裕翔に付き添った。
スタッフ＞では一旦、皆さんも楽屋に戻って頂いた方が
いいですかね。
八乙女＞そうですね。再開するにしても時間はかかると
思うので。
スタッフ＞はい。では、楽屋で待機をお願いします。
有岡＞了解です。
みんな動き始めたのに、あいつの姿がない。振り返るとさっきの姿勢のままぼーっと立ち尽くしていた。
高木＞山田、楽屋戻ろ。
声を掛けた直後、山田はゆっくりと床に座りこんだ。
高木＞っと、大丈夫？
山田＞…ごめ、なんか、急にっ…。
近づいてみると、浅い呼吸を繰り返す山田は少し震えていて、泣きそうな目をしていた。
高木＞大丈夫か？ゆっくり息しような。
山田＞…んっ…ふぅ……は､ぁ……。
高木＞ん、大丈夫、大丈夫。
山田が顔を埋めた俺の肩が、じんわりと濡れていく。
山田＞…こわいよっ…。
高木＞そうだな。でも大丈夫だよ。
山田のいとこは病弱で、何度も危険な状態になっていたという話を聞いた事がある。今はもうそんな事はないらしいけど、その場に居合わせた時の記憶が山田にとってある種のトラウマみたいになって、今でもメンバーや家族の誰かが体調を崩すと、精神的に不安定になることがある。
薮＞山田、大丈夫？
上から声が降ってきて、見上げると薮くんがいた。
高木＞あれ、戻ってきたの？
薮＞うん。とりあえずは寝てくれたからしばらく様子を
見よう、ってことになった。楽屋に戻ったら２人が
いないから探しに来たんだよ。
高木＞そっか。
薮＞山田、楽屋戻らない？
山田＞…ゆと、は…？
薮＞大丈夫、心配しなくていいよ。今は寝てるけどすぐ
に良くなるから。
山田＞…ほんと､？
薮＞本当だよ。約束する。
山田＞…みんな、のとこ、いく…。
薮＞うん、行こうね。歩ける？
山田＞…だいじょぶ…。
薮くんと2人で両側から山田を支えて楽屋に向かった。
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作者名：aki | 作成日時：2021年9月4日 12時
