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9,揺れるカトレアIII ページ10

カイザー「こんばんは、仔猫ちゃん」

 絵心の部屋から出ると、扉のすぐ真横の壁にカイザーがもたれかかっていた。


 『こ、仔猫……やっぱりその呼称って“猫キャッチのひと”が尾を引いてる感じですか?』

カイザー「さあな、少なくとも俺のは愛称だ」

 『絵心ちゃんに何か用が』

カイザー「いや、お前を探していた」

 『え……』

 少し首を傾げると刺青の入った腕で腰を抱かれ、もう片方の手で視線を合わせられる。


カイザー「俺が“青い監獄(ここ)”に来た理由のひとつは、お前に会うためだ。

 ——————青い檻の……いや、戦場の狂戦士(フィールドのバーサーク)


 バチっと合ったカイザーの目はどこか妖艶だ。

 カイザーの言葉に反応したAは、表情を固くして震える瞳で抗うように見つめ返す。


 『なんで、それを……⁉︎』

カイザー「名前だけ有名でも正体は分からない。
 だが、俺くらいになれば突き止めるのも容易い」

 『(U-20のあの猫の件で注目されてるのか、私)』

カイザー「そんな苦虫を噛み潰したような顔をするな。
 せっかくの綺麗な顔が台無しだ」

 『一体、狂戦士(わたし)をどこまで知って……』


 きっとカイザー(このひと)もそうだ。

  狂戦士(わたし)を、失敗作だと嘲笑っている。
 “ 狂戦士(わたし)”という存在を、踏み荒らしに来たのだろう。

 世界に“なり損ねた”天才だと、とんだ駄作だと、かつて誰かから言われたように狂戦士(わたし)を謳うんだ……‼︎



カイザー「“すべて”……と、言ったら?」

“消えてから今までの間、ずっと“意味のないコト”して生きてきちゃった?”




 いつか言われたあの言葉がフラッシュバックする。


カイザー「フッ、そう身構えるな……
 ——————無理にでも喰ってやりたくなる」

 ひゅっと息を呑む。

 本当は投げ飛ばしてしまいたいけど、目の前の双眼に怯んだせいか体が言うことを聞かない。


 『(なんで……なんで私はいつも、過去の自分に押し潰されてしまうんだ……‼︎‼︎)』


 か弱い思考を掻き消すようにカイザーの吐息がAの聴覚を麻痺させる。



 “たかが過去(トラウマ)、されどトラウマ(過去の記憶)”……

 たったこれだけのことで弱体化してしまう自分が、狂戦士(わたし)が……


 —————————わたしは、大っ嫌いだ。

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ネムノキ(プロフ) - 神乃木琉依さん» コメントありがとうございます!読み返してくださっていると聞いて、とても嬉しいです♪これからもよろしくお願いします! (4月21日 22時) (レス) @page20 id: 2f94861ab5 (このIDを非表示/違反報告)
神乃木琉依(プロフ) - とても面白くて定期的に1から読み返してます!更新、楽しみにしています! (4月17日 0時) (レス) id: 7e584092a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ネムノキ | 作成日時:2024年2月3日 14時

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