縁結び【滝川雅貴】 (ページ22)

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聴こえないページ22

『引きたくない』

その言葉を聞いて、昨日のことがフラッシュバックする。

――――

『待てって!!俺、やるなんて一言も……』

『俺はもう弓引きじゃない!!』

『ごめん……』

――――

ひとつひとつが重い……。

昨日のことでさらに追い込ませてしまった気がする。

私は湊くん顔を見る。

少し俯きながら口を開いた。

湊「……弦音が聴こえないんだ」

湊くんの言葉は全て胸に刺さった。

好きなはずなのに自分の手からどんどん離れていく。

？「……辛いな」

湊「!!」

その言葉に俯いていた顔を上げる。

男の人は体を私たちの方に向けた。

？「お前、名前はなんてゆう？」

湊「鳴宮湊」

男の人が私を見た。

私「……早坂A」

？「そうか、俺は滝川雅貴」

雅貴「湊にA、早気が辛いのは何故だと思う」

間を作りながら淡々と滝川さんは話し続ける。

雅貴「当たらないからか？馬鹿にされるからか？それとも自信が無くなるからか？……どれも違うな」

早気だけじゃない……。

どんなときでもいちばん辛いのは……。

私「……自分自身が分からなくなるから」

湊くんと滝川さんが私を見る。

私「あ………すみません」

余計な事を言ってしまった。

雅貴「いいや、Aの言ったことはあってる。早気が辛いのは自分で自分がわからなくなるからだ」

湊「俺は……」

雅貴「自分の射型が、気持ちが分からない。それが一番辛い……だろ」

その言い方に違和感を感じたのか湊くんは口を開いた。

湊「自分は分かるって言いたいみたいだ」

雅貴「あぁ、その通り。早気に苦しんだのは自分一人だと思うなよ」

そう言って滝川さんはフッと笑った。