バツ恋

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広臣side









タコ女は、相手が立ち上がるとスッと綺麗に立ち頭を下げた。









お辞儀の角度とか完璧で
男を建てることの出来る女……そう見えた。






コイツがセクハラ親父か……？
親父というより若社長って感じの奴は
通り過ぎる時、俺にも軽く頭を下げた。








そして一言。







『 彼女をこんな汚い仕事に使うな 』 と。









上層部でも知らない仕事の取り方だろう。


俺だって研修生だが一通り調べてはいる……
というよりも勉強させられたに等しい。






身なりの整った若社長は
俺を虫けらでも見るように冷めた目で俺を睨みつけた。









凛としたままのタコ女は、俺を見るなりテーブルの上に置いてあったファイルと椅子に置いてあった自分のカバンを肩に掛けて、ゆっくりと歩いて来た。









『 どうしたんですか？ 』



「 ……いや、近くに来たし、、様子見？ 」



『 ちゃんと取りましたよ。契約。』









見せびらかすようにそのファイルを揺らしながら、にこりと微笑んだタコ女は、俺を通り越してクルりと振り返った。




長い髪はゆっくりと動き
綺麗な横顔をさらに憂いを纏った。









『 ……ご飯食べに行きません？ 』



「 ……おう。」



『 契約取ったので奢って下さい。』



「 ……いいよ。」



『 いいの！？ 』



「 ラーメンな。」



『 やった！ 』









憂い含んだ横顔から
一気に満開となった綺麗な笑顔。






たったラーメンでもこんなに喜ぶもんなんだろうな……。



……そういや、、コーヒー一杯でも幸せになる奴だったわ。









『 ほら行きましょ！ホストさん！ 』



「 ……おい、それやめろ。」









ふふふふっと今度はお淑やかに笑って
俺に手招きしたタコ女。









……無事でよかった……。









そう思った。









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