バツ恋

． ページ25

Aside









私の前に座ったさっきまでとは
違って爽やかな笑みを見せた人。









LDH社の岩田専務。







愛妻家で有名でお店に夫婦揃って来たこともある。
奥様もすごい面白い人で私のような夜の女性に対してもなんの偏見もなく接してくる。







『 AQUAで見なくなったよね。うちの嫁さんが悲しんでたよ。A会の一員にしたかったのに！って。』



「 辞めたんです。今はお昼の仕事を。」



『 そっか。でもウーバーのあの人は気をつけた方がいいよ。』



「 ……ですね。助かりました。ありがとうございます。」



『 マリンさんは、今どこの会社にいるの？ ウーバーと契約だからライバル会社だったりして？ 』



「 あ、、名刺、、すいません、、研修中だからもらって無くて、でもライバルではないと思いますよ。」



『 本当かな〜？マリンさんならいろんな意味でどこでも引く手数多だと思うけど 』









いろんな意味……
それは多分、私の黒革の手帳のこと。
上位にいて大手の企業の方々と知り合い
色々と内情も知ってるつもり。




でもそれを使うことは絶対にない。
もう身を引いたわけだけど
守秘義務を守るのが務め。
お客様のお話は、墓場まで持っていく。









『 マリンちゃんならうちにほしいよ。癒しにもなるし…こんな扱いはさせないけどね。』









こんな扱いか……。
私もこんな扱いまでされると思ってなかったな……


メールの内容を知らされないまま送り込まれて
言われた通りにセリフを口にしただけで
部屋へとお誘いを受けるんだから……。









『 お……？やっと仲間が来たみたいだね。』



「 え、、、？ 」








岩田さんが指差した方向へと顔を向けると
ずんずんっとこちらへ向かってくる男性が1人。









『 知り合いにそっくりだな…。 』



「 え、、ホスト似の知り合いも専務にはいらっしゃるんですか？ 」



『 うん。俺、専務になったのにバイトでこき使う知り合いにそっくり。』









……LDH社の専務を使うなんてものすごい会社の社長さんなんだろうな。









『 それじゃ、俺はこれで。 』



「 はい。助けて頂きありがとうございました。」









岩田専務が立ち上がると同時に私も立ち上がり深々と頭を下げた。






背中を見送る私の前に立ちはだかったのは
ホストオミさんだ。







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