甘美な日々【ＨＱ短編集】

６．コンプレックス【花巻貴大】 ページ6

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たまたま、本当にたまたま、花巻くんの手が私の胸に触れた。


「っあ、ご、めん…」そう言って恐る恐る手をどかす花巻くんに、顔が赤くなるのがわかる。


それは、恥ずかしいからじゃない。



私はスポーツブラで収まるくらい胸が小さい。


それは私にとって、かなりのコンプレックスで。


花巻くんにはバレたくないと思っていた。






『…っわ、私教室戻るから…！』






逃げるようにその場を去ろうとした時、ギュッと腕を掴まれた。


そして、私は花巻くんの胸の中にポスンと収まった。






「…何、気にしてんの？」





直球で聞いてくる花巻くんに、私は苦しくなる。






『ごめん…引いた、よね。コンプレックスなんだ…。』





私がそういうと、花巻くんの大きな手が私の頭を撫でた。


そしていつもよりも柔らかい声で笑う花巻くん。







「…コンプレックスは人それぞれだけど、この先触るのは俺だけなんだから。

そんな気にしなくていいよ」




『…え、』




「俺は全然引かないけど。

それに、どんな姿であれAはAだろ。

引く所か更に好きになったわ。」




『っな、にいってんの…！』




「俺が大きくしてあげよっか？」




『ッバカ！』






思わず零れる涙は、花巻くんのシャツに染み込んだ。

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