15. ページ15
「どうしよう、分かってはいたけど…。」
万葉さんを探しに鍾離さんとは一旦別れたはいいものの、璃月のあちこちにいるであろう千岩軍に行く手を阻まれ、なかなか思う様に動けないでいた。
鍾離さんはというと、別れ際に「心配はいらない。」とどこか余裕を含んだ笑みでそう言っていたけれど。
見つかったが最後、考えただけで分かってしまう結末に私はその言葉があれどかなり警戒を怠らずにはいられなかった。
「夜になれば、少しは見張りもいなくなるかな。」
千岩軍の視線を掻い潜りながら建物の陰に回り込み、硬い地面に膝を抱えて座り込む。
傍から見れば、いじけてしまった子供のように見えるだろうが、生憎ここは建物の陰のおかげで死角だし、私は子供というわけでもない。
そう考えている内に段々と分かってくる、璃月特有の匂い。
木の穏やかな匂いが鼻孔をくすぐり、それは共にリラックス効果をも与えてくれている様だった。
「なんだか眠くなってきたな…。」
その匂いを嗅いでいるとどうも、今までの疲れを発散させてくれるかのように私を眠りへと誘う。
ウトウトと頭が揺れているのが自分でも分かり、それが心地よくて堪らない。
「我が見守っているというのに、居眠りとは。」
深い眠りへと落ちそうになった時、突如降り注いだ声。
追われている身だというのに、なぜかその声に焦りは一切感じず、ただぼーっとする思考のまま顔を上げると、
「お前を守るようにと、帝…、し、鍾離様から仰せつかった。」
腕を組みながら私を見下ろす深緑色の髪色をした、どこか浮世離れした男の人がそこにはいた。
そこでようやく、鍾離さんが心配いらないと言っていた理由が分かり、心が温かさで満たされて行く。しかしそれと並行して、一部始終を見られていたかと思うと申し訳なさでいっぱいな気持ちになる。
「ごめんなさい、居眠りするなんてとんだ失礼を。」
急いで立ち上がり頭を下げようとした私を静止させるかのようにおでこに触れる、彼の少しだけ冷たい手。
「お前が頭を下げる必要はない。」
けれどそう言って少しだけ微笑む彼の言葉は、とても温かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1168人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚木 京(プロフ) - もしよろしければ、TikTokのアカウント教えていただきたいです！ぜひ動画見させていただきたいです！！ (4月30日 3時) (
レス) id: eff68035a3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し17098号(プロフ) - 初コメ失礼します！！ 話の内容も面白いし文章も読みやすいです！！ これからも無理の無い範囲で頑張ってください (4月24日 0時) (レス) id: 45c6c008b2 (このIDを非表示/違反報告)
いちごみるく(プロフ) - の〜さん（旧もこ）さん» 原神は皆個性があって素敵ですよね🌟オチとかは今のところ考えてなくて皆から(恋愛的に)愛される小説目指してますので頑張ります🥰 (3月17日 20時) (レス) id: 9c0c3ed197 (このIDを非表示/違反報告)
の〜さん（旧もこ）(プロフ) - 私原神のキャラ全員推しなのと愛され大好物なので嬉しいです！出来たら全員に恋愛的に愛されたいです。無理ならすみません。更新頑張ってください！楽しみにしてます！ (3月17日 20時) (レス) id: 79dfdf41ef (このIDを非表示/違反報告)
狸 - 返信ありがとうございます!!!!どんなにたっても待ちますよ!!!!!! (2月28日 10時) (レス) id: 9a07639c58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちごみるく | 作成日時：2022年11月23日 21時
